タクシーで落石事故にあい保険金がもらえない

私の夫は先日タクシーに乗り国道上を走っていて交通事故にあい死亡しました。事故現場の国道右側は高い崖になっており、約七メートルくらいの高さまでコンクリートで固めてありますが、その上は岩石が露出していつ崩れおちてくるかわからないという危険なところです。ただ「落石注意」という標識はたっておりました。事故の模様は、運転手も夫も死亡したのではっきりしたことはわかりませんが、ボンネットがつぶれ落石があったことから、崖の上から石が落ちてボンネットにあたって、事故が発生したと思われます。タクシー会社に損害賠償を請求したところ、タクシー会社は保険金がでないからといって支払ってくれません。このまま泣寝入りしなければならないのでしょうか。

 自動車損害賠償保障法三条によりますと、タクシー会社は原則としてタクシー運転手の起こした人身事故について責任を負い、したがって保険会社は保険金の支払いを拒むことはできません。
 ただ、運転手に過失がなかったこと、事故の原因が運転手以外の第三者によるものであることなどタクシー会社が証明できれば、タクシー会社は損害を賠償する義務はありません。したがって保険金も支払われないことになります。

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本件の場合にまず問題となるのは、事故が落石によるものであるかどうかということです。自動車の破壊状況、当時の周囲の事情などから推測して、落石以外に事故原因が考えられず、また落石以外の第三者の行為が原因でないことがはっきり証明できないかぎり、保険金の請求はできます。
 では、落石が原因だということになればどうなるでしょうか。
 また、その場合には、賠償請求できないでしょうか。
 たとえ落石が原因だったとしても、それだけではタクシー会社は責任をまぬがれることはできません。
 そのような落石事故を回避するについて運転手に何の過失もなく、どうしてか避けることができなかったことをタクシー会社は証明しなければならず、したがって保険会社は保険金を支払わねばなりません。
 とくに、現場には落石注意の標識もあったことですし、また従来もしばしば落石のあったところであり、天候などから落石のおそれの多分にある状況であったとすると容易に免責されないでしょう。そしてこのような証明は、すベてタクシー会社のほうでしなければなりませんので、運転手もあなたの夫も死亡して事故原因のはっきりしない本件では、あなたはタクシー会社に要求して保険金の支払いを受けることができるでしょう。
 ただこの場合、タクシー会社のほうで、運転手にも過失があったかもしれないが、事故の主たる原因は落石にあり、したがって、その分だけ会社の負担すべき賠償額は減額してもらいたいといってきたとき、どうなるでしょうか。
 落石は被害者の過失によるものではありませんから、もちろん過失相殺の対象となるものではなく、全損害の賠償をタクシー会社に対して求めることができます。
 本件では、タクシー会社に損害賠償を請求できることはほぼ確実ですが、万一運転手に過失は全然なく、落石による事故であったということが証明されたとしますと、タクシー会社の責任を問うことはできず、したがって保険金も請求できません。
 その場合の救済法はまったくないかといえばそうでなく、国に対して損害賠償を請求する道が残されています。
 すなわち、国家賠償法に基づいて、そのような危険な場所について、十分な損害発生防止措置をとらなかった国に対して、国道の管理責任を問い、損害賠償を請求できます。

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