事故現場で有利な状況判断をするには
人身事故を起こしたときはもちろんのこと、単に物をこわしたというときであっても、事故を起こした運転者がまずしなければならないことは、事故に対する応急措置
をとることと、警察官に法定事項を報告することの二つです。
この二つのことは道路交通法の七二条で定められている法律上の義務であり、違反すると罰則の制裁がありますから、平常よく頭に入れておくことが肝心です。したがって、決して物をこわしたまま逃げ出したり、警察への報告を怠ったりなどしてはなりません。応急措置を怠ったときは三年以下の懲役または五万円以下の罰金、警察官への報告を怠ったときは三か月以下の懲役または三万円以下の罰金に処せられることになっています。事故に対する応急措置というのは、ただちに車の運転を止めること、負傷者を救護すること、道路における危険を防止することなどです。
これが、車が店舗に突っ込んでしまった場合などは、車をそのままにしておいた方がよいか、わきの方へずらした方がよいかなど、とっさに情況判断をして適切に処置することです。
それからすぐに事故発生の情況を警察官に報告しなければなりません。事故現場に警察官が駆けつけてくればその警察官に、そうでないときはもよりの警察署の警察官に届けます。報告事項は、交通事故が発生した日時と場所、死傷者の数、負傷者の負傷の程度、損壊した物の種類とその損壊の程度、その事故について運転者が講じた措置などです。
事故を起こすとつい気持ちが転倒してあわててしまいますが、ここに述べた措置をとることは、事故を起こした者に対する法律上最少限度の要求ですから、運転する人は決して忘れないようにしてください。
スピードを出し過ぎたり、ハンドルを切り損なったりして車もろとも他人の家に飛び込んで、家の柱を倒したり、それほどでなくても他人の店先に突っ込んで商品をめちゃめちゃにしてしまうといったような事故は、ほとんどすべて運転者側に一方的に過失責任があります。この場合の被害者、つまり車に飛び込まれた家の持主や居住者はなんの責任もないどころか、平穏無事であるべき住居の安全を不意に破壊されて非常に気の毒な情況にあるわけです。
このようになんの過失もなく非常な災難を受けた被害者と対応するときは、すなおに自己の非を認めて陳謝する以外に方法はありません。弁解は無用です。被害者の納得のいく損害賠償をすることを誠意をこめて話すことです。
このような事故では、被害者からは不意に災難を受けたことによる怒りの感情をむき出しにされて、非難の文句をいわれることか多いでしょうが、運転者が一方的に悪いのですから、どんなひどい言葉をいわれても我慢すべきです。忍耐が肝心です。
被害者も感情を持った人間ですからこちらかひたすら陳謝して、誠意をつくして応
対すれば、次第に怒りの気持ちも静まって、事故の程度いかんによっては賠償金額も思ったよりは少ない額で示談をしてくれることもあります。事故処理についての自
分の誠意を被害者に認めてもらうこと、これが結局は早期解決への道であり、賠償金額をできるだけ少なくしてもらえる最上の方法でもあるのです。
なお、加害者が任意の自動車保険、とくに対物賠償保険や車両保険に加入しているときには、保険会社への通知を忘れずにすることか肝心です。事故の通知を受けた保険会社ではただちに調査員を事故現場や修理工場に派遣して事故の状況を調べたり、修理工場と修理費の協定をしたりしてくれます。
経営者が責任を負わない自動車の使い方は/ 他の会社の車で事故を起こしたときの責任/ 倒産会社の車が起こした事故と債権者集会の責任/ 無断運転の同乗者がケガをしたときの会社の責任/ 現場の運転手の事故に社長は責任を負うか/ 運行管理をしていない重役にも事故の責任はあるか/ マイカーが通勤中に起こした事故と会社の責任/ 無断運転で事故を起こされたときの会社の責任/ 妻名義の車で夫が事故を起こしたときの妻の責任/ 下請会社が事故を起こしたときの元請会社の責任/ 企業のマークを許した運送会社の車が事故を起こしたとき/ 代表取締役個人が交通事故の責任を負う場合があるか/ 事故現場でとるべき措置と義務/ 相手に過失があるときの応答/ 事故現場で心得ておくべき事柄/ 事故現場で警察官と応答するとき/ 自分に過失がないときの対応の仕方/ 事故現場で有利な状況判断をするには/ 他人の過失で事故が起きたときの対応/ 事故現場での運転者の心得/ 実況見分書などの作成で注意すべき点/ 被害者の過失を立証する資料はどう集めるか/ 数ヶ月たってから被害者が賠償を請求/ 持病による入院治療費を支払う必要があるか/ 運転手が助手を轢いたときの賠償/ 加害者が示談するときの注意点/ 被害者が脅迫的に賠償請求するときは/ 警察官の取調べにどう対応したらよいか/ 検察官の取調べにはどう応答するか/ 事故現場から刑務所までの手続き/ 刑事事件で弁護人を依頼するとき/ 刑事裁判の手続きはどう進められるか/ 面会や差入れをしたいときはどうするか/ 保釈と保証金の取扱い/ 刑罰の種類と執行猶予の関係/ 事故の量刑はどのようにして決められるか/ 示談による解決と刑罰の関係/ 交通違反で懲役刑になるときは/ 刑の執行はどのようにしてされるか/ 故意犯にも区別があるか/ 過失犯に刑罰の軽重がでてくる理由/ 故意と過失を区別する基準/ 信頼の原則とは/ 違反現場で抗弁を聞いてくれない/ 標識が見えないときの違反はどうなるか/ 自動車検問を警察官ができる場合/ スピード違反で手錠をかけられたときの対策/ 見にくい標識を見過ごしても交通違反か/ 保険契約の手続きと要点/ 運転手は強制保険によって保護されるか/ 保険金の請求は被害者からもできるか/ 被害者が填補金を請求できる場合/ 通知義務違反を理由に保険金を払ってくれない/ 死亡による慰謝料を払ってくれない/ タクシーで落石事故にあい保険金がもらえない/ 子供の得べかりし利益の算定に納得がいかない/ 示談後に予想外に治療費がかさみ追加請求したが/
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