被害者が脅迫的に賠償請求するときは

私は先日ちょっとしたミスでAを車でひっかけてしまいました。もとより十分に相手方の賠償を考えていますが、突然のことで金銭の都合もあって保険の方の手続きも相談中なのに、相手方から一日に何回となく電話がかかり、あるいは他人を介して直接私の家にやってきます。家の者もノイローゼぎみですがどのように対処すれぱよいでしょうか。

 あなたがちょっとしたミスで交通事故を起こしてしまったのは、相手方はもとよりあなたにとっても非常に不幸なことです。もちろんあなたとしては、相手方の被害については十分賠償責任を感じているわけですから、通常の相手であればそのように執拗に請求はしないはずです。相手方としても民事上の損害賠償責任をあなたに請求することは当然として、それ以上にあなたの他の権利を侵害することは許されないことです。そこであなたのような場合には、つぎの点に留意して弁護士に交渉を委任した方がよいでしょう。

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相手方がこちらの十分な誠意を踏みにじって、嫌がらせに何回となく電話をかけてくるようなことは、場合によって刑法上の脅迫罪にも該当します。たとえば告訴する意思もないのに「早く示談した方がよいからいくらの金額を持ってこい。さもないと告訴するぞ」などというのは明らかに被害者という立場を巧みに利用した強請です。このような場合には事件を弁護士に依頼し「交渉はすべて弁護士としてくれ」と伝えいっさい弱味を見せないことです。
 つぎによく被害者が直接こないで他人を介してくることがあります。もちろん被害者の身内の者であれば、こちらの誠意を十分納得させ、事故の交渉を持てばよいのですが、多くは事件屋とか一見ヤクザ風の者がやってくることかあるのです。
 これらの者が不穏な言動をすればもちろん刑法上の脅迫、恐喝などの罪に問われますが、別に非弁活動にも該当します。非弁活動というのは弁護士でないものか法律的交渉を有償的にすることです。弁護士法七二条には「弁護士でない者は報酬を得る目的で訴訟事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務をすることが出来ない。」と規定され、これに違反する者は、二年以下の懲役または五万円以下の罰金に処せられます。
 あなたの家にもしこのような者がきた場合には、相手方と本人との関係や代理権限の有無など聞きだし、時によってはこのような非弁活動のことなどさりげなく口にして、相手の気勢をそぐのもよいでしょう。またあなたが自動車保険に加入しているならば、すぐに保険会社に事故の発生を告げると同時に、相手方との交渉について相談するのも一案でしょう。
 日本弁護士連合会でも、この種の非弁活動の増加が目だってきたため、被害者に積極的に申告するよう呼びかけています。事件屋とかは法律的無知の者には強く出ますが、自分の身の危うくなるような知識を相手が持っているとわかると、急に態度を変えるものです。

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