被害者の過失を立証する資料はどう集めるか
私は、先日自家用車を運転中、信号機の設備のある交差点でタクシーの左側面に私の車をぶつけ、タクシーの運転手を怪我させてしまいました。私は、信号が青であったので、その表示に従って進行したら、突然にタクシーが飛び出してきて、あっという間に衝突してしまったのですから、タクシーの過失も相当に大きいと思うのですが、どんな資料を集めておくのがよいでしょうか。
交通事故が発生すると、直ちに警察の現場検証が行なわれることはいうまでもありません。
この現場検証で相当程度の証拠なり、事故状況なりは収集、把握されるのですが、かといって最近のように交通事故がひんぱんに発生するようになりますと、警察の現場検証も、今後まったく争いのないように十分に行なわれるといったところまでは、望めないといったのが実状です。
そこで、被害者、加害者のいずれを問わず、当事者自身からの積極的な証拠収集といったことも必要となってきます。
この意味で何よりも重要なことは、現場保存です。最近のように交通事情が悪くなると、事故があっても、衝突した車を、そのまましばらく現場においておくといったことは、ほとんど望めなくなりました。
そこで、どうしても当事者双方が事故の場所、相互の車の位置、状況などを事故後すぐ確認しておくことが必要です。
ところで、自分の視覚のみにたよっての距離の側定ということは、とかく不正確なものですので、道路脇の家、樹木、電柱など固定したものを目標にして、それとの関係で距離を確認しておくといったことも必要でしょう。また、スリップ痕の状況なども必ず自分の手でできるだけ詳細にメモしておきたいものです。
場合によっては、これを写真にとっておくといったことも必要でしょう。この写真をとるときも、その位置、距離を明らかにするために、できるかぎり道路脇の家、電柱など固定的なものを背景に入れてとっておきたいものです。
また目撃証人の確保も極めて重要です。どんな事故でもそれが深夜だとか、人里離れたところでおきたものではないかぎり、一人や二人の目撃者はいるものです。
そこで、この目撃者に話を聞いてその話の内容をメモにとっておくなり、少なくとも住所氏名は確認しておきたいものです。
ことに本問の場合のように、信号が青であったかどうかは横断歩道を渡っていた歩行者も、当然に確認しているはずですので、これら歩行者の中の一人だけでも住所氏名は確認しておく必要があります。
これと同時に、事故直後の相手方のいい分も十分に聞いておき、そのメモをとっておくといったことも必要です。
といいますのは、事故の当事者は、事故直後のいい分、検察庁での取調べの際のいい分、裁判になってからのいい分と時間がたつにつれて、自分の責任をいくらかでものがれようとするものに変えていくといったのが普通でして、その意味では、事故直後は加害者も心理的に動てんしていますので、比較的事故の状況を素直に話す場合が多いし、また時として十分に考えていないので、自分に不利なこともしやべるといったこともあります。極端な場合では、裁判になると、事故当時認めていた他の車がそこに停車していたといった明白な事実をも否定することも間々あり、加害者、被害者の証言だけでは、いずれともきめかねるといったことも起こり得ることです。
こんな意味で、できれば目撃認人を確認しておくことが必要ですし、これができないときでも、少なくと事故直後の相手方のいい分を、メモにとっておくといったことは、ぜひしておきたいことです。
いずれにせよ、裁判にたれば、相手方はあなたとまったく相反する主張をするものと考えて、それに対応した証拠を集めておくといったことが必要です。
経営者が責任を負わない自動車の使い方は/ 他の会社の車で事故を起こしたときの責任/ 倒産会社の車が起こした事故と債権者集会の責任/ 無断運転の同乗者がケガをしたときの会社の責任/ 現場の運転手の事故に社長は責任を負うか/ 運行管理をしていない重役にも事故の責任はあるか/ マイカーが通勤中に起こした事故と会社の責任/ 無断運転で事故を起こされたときの会社の責任/ 妻名義の車で夫が事故を起こしたときの妻の責任/ 下請会社が事故を起こしたときの元請会社の責任/ 企業のマークを許した運送会社の車が事故を起こしたとき/ 代表取締役個人が交通事故の責任を負う場合があるか/ 事故現場でとるべき措置と義務/ 相手に過失があるときの応答/ 事故現場で心得ておくべき事柄/ 事故現場で警察官と応答するとき/ 自分に過失がないときの対応の仕方/ 事故現場で有利な状況判断をするには/ 他人の過失で事故が起きたときの対応/ 事故現場での運転者の心得/ 実況見分書などの作成で注意すべき点/ 被害者の過失を立証する資料はどう集めるか/ 数ヶ月たってから被害者が賠償を請求/ 持病による入院治療費を支払う必要があるか/ 運転手が助手を轢いたときの賠償/ 加害者が示談するときの注意点/ 被害者が脅迫的に賠償請求するときは/ 警察官の取調べにどう対応したらよいか/ 検察官の取調べにはどう応答するか/ 事故現場から刑務所までの手続き/ 刑事事件で弁護人を依頼するとき/ 刑事裁判の手続きはどう進められるか/ 面会や差入れをしたいときはどうするか/ 保釈と保証金の取扱い/ 刑罰の種類と執行猶予の関係/ 事故の量刑はどのようにして決められるか/ 示談による解決と刑罰の関係/ 交通違反で懲役刑になるときは/ 刑の執行はどのようにしてされるか/ 故意犯にも区別があるか/ 過失犯に刑罰の軽重がでてくる理由/ 故意と過失を区別する基準/ 信頼の原則とは/ 違反現場で抗弁を聞いてくれない/ 標識が見えないときの違反はどうなるか/ 自動車検問を警察官ができる場合/ スピード違反で手錠をかけられたときの対策/ 見にくい標識を見過ごしても交通違反か/ 保険契約の手続きと要点/ 運転手は強制保険によって保護されるか/ 保険金の請求は被害者からもできるか/ 被害者が填補金を請求できる場合/ 通知義務違反を理由に保険金を払ってくれない/ 死亡による慰謝料を払ってくれない/ タクシーで落石事故にあい保険金がもらえない/ 子供の得べかりし利益の算定に納得がいかない/ 示談後に予想外に治療費がかさみ追加請求したが/
copyrght(c).道路と交通の豆知識.all rights reserved