標識が見えないときの違反はどうなるか
右折禁止の標識があらたのですが、私の進路からは物陰にかくれて見えなかったので、気がつかずに右折したところ、警察官に違反だといわれてしまいました。このようなときでも、交通違反に問われてしまうのでしょうか。
道路交通法七条により、公安委員会は、道路における危険を防止し、その他、交通の安全と円滑を図るため必要があると認めるときは、車両などの通行を禁止または制限できることと定められ、この場合には道路標識を設置しなければならないことになっています。また、道路標識、区画線および道路標示に関する命令の二条により、右折禁止標識は、原則として右折を禁止する交差点の手前の左側の路端に設置することになっています。
標識があるのを知りながら、あえて右折するときは、法が禁じた行為を故意に犯したものですから、責を問われるのはいたしかたありません。
逆に、公安安員会が定める前記の通行の禁止ないし制限の処分は、道路標識が設置され、存在してのみ効力を有すると解せられています。したがって、標識がいったん設置されても、なんらかの理由により客観的に認識できなくなっている場合には、公安委員会が、通行禁止ないし制限した場所であっても、責任を問われることはありません。判例でも、一方通行に指定された道路であっても、その出口に標識がない場合には、その道路の出口から入口のほうに自動車が転倒した件について、このことを認めています。
また、標識はあったけれども気がつかなかったときには、気がつかなかったことについて、過失があったか否かが問題になります。過失とは、通常の注意をもってすれば認識しえたであろうに、これを怠ったため認識しえなかった場合のことですから、単に違反者の主観的判断のみによってきめられるものではありません。
本問によりますと、標識が物陰になって見えなかったとのことですが、その状況においては、あなた以外のだれでも見えないであろうといえれば、過失すらないといえましょう。
道路交通法においては、刑法犯と同じように、故意ある行為が処罰の対象となるのが原則で、過失の場合には、とくに法規が定めているときに限られますが、過失による通行の禁止制限違反は、同法一一九条二項により処罰されることになっています。
道路交通法が、過失についても、とくに処罰の対象としているものは、スピード違反(道交法六八条)、信号無視 (同法四、五条)、通行の禁止制限違反(同法七条)、踏切通過違反(同法三三条)、整備不良車両の運転(同法六二条、六三条の二)、安全運転義務違反(同法七〇条)、通行区分違反(同法二〇条、三四条の二、七五条の四)、進路の変更禁止違反(同法二六条の二)、追越禁止場所における追越し違反(同法三〇条)、徐行義務違反(同法四二条)、一時停止違反(同法回三条)、指定区間における横断、転回、後退の禁止違反(同法二五条の二)、停車、駐車違反(同法四四条、四五条、四八条、四九条)、無灯火、灯火の不操作運転(同法五二条)、合図の不操作(同法五三条)、警音器不吹鳴(同法五回条)、免許証不携帯(同法九五条)などです。
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