実況見分書などの作成で注意すべき点

交通事敏保の警察官は、誘導的な質問をして、事故を起こした者に不利な「現場見取図」とか「実況見分書」などを作成する、ということをよくききますが、その当時のことを間違いなく調書にとってもらうためにはどのような応答をすべきでしょうか。
 警察官がくると、まず、破損した車体や、転倒した人体のあとに残された道路上の血痕などを写真におさめ、つぎに、道路がアスファルトの舗道であれば、白墨などを用い、その他、標識筒を立てたりして、衝突地点、人体が倒れた地点、スリップの跡などにしるしをつけ、さらに運転者などに説明を求めて、進行方向や、被害者を発見した地点、ブレーキをかけた地点などに、それぞれしるしをつけ、その各地点と地点の距離を巻尺ではかり、それにもとづいて「現場見取図」が作成されるわけです。

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つまり、この「現場見取図」は、事故を起こした自動車運転者の説明を主として作成されるものですから、十分心を落ち着けて、警察官に対し「私が、被害者の立っているのを発見したのは、この地点です」「私が、警笛を鳴らしたのはここです」「震動を感じ、ストップしたのがこの地点です」というように、明確にその地点を指示すべきです。
 交通事故係の警察官は、熟練からくる自信のあまり、いろいろ理くつをいって、いろいろ誘導的な問いを発しがちですが、あくまで冷静に、自信をもって、実際の地点を強く主張することが大切です。
 うかつに、誘導にかかったり、早合点などから、発見地点をいい加減に指摘したため、これが「現場見取図」に記載されると、その発見地点が衝突地点に近すぎれば、前方注視義務違反のキメ手とされ、また遠すぎれば、徐行、警笛、迂回などの措置を怠ったことの義務違反に問われ、あとで、いかに弁解しても、過失責任を免れない破目になります。
 「実況見分書」は、この「現場見取図」にもとづいて、調書式に作成されるもので、このなかに、運転者のいい分と、相手方、または目撃者のいい分の大要が、要約して記載されます。
 人身事故で、被害者が病院に収容された場合は別として、自動車同士の衝突とか、被害者に同乗者がいたりした場合は、「お前が悪い」「いや、俺の方にはなんの落度もなかった」というような論争が起こりがちですが、決して気おくれせずに、堂々と自分の所信を主張し、正しいいい分を的確に記載してもらうことが大切です。後で、反証をあげてやるなどと思っても、それは後の祭りで、この「実況見分書」が、事故にもっとも接着して作られた貴重な文献として、裁判上、非常に大きな証拠価値をもち、民事訴訟のうえでも有力なキメ手となることを念頭において、ねばり強く、自己のいい分を通すことをおすすめします。
 悪意で書くのではないでしょうが、警察官のとる調書には、ひとつのイヤな型があります。あくまで、自分の過失を否定して 供述したつもりであっても、あとでその供述調書を見ると、型どおり、経費や資産、収入などを述べた項目のつぎに、「それでは、これから私か事故を起こし他人に傷害を負わせてしまったことについて、その事情をくわしく申し上げます」などという、おかしな前置きが本人の意志に反して書き加えられていたりすることかあります。
 そのほか、調書の末尾のほうには、「このような事故を起こしましたことにつきまして、被害者や、遺族の方々には、まことにお気の毒だと思っております。どうかご寛大にお願いします」などと、書き添えてあるのをみると、否認の調書か、自白の調書かちょっと識別がつかなくなります。
 警察官のとる調書には、どうしても警察官の予断や、主観がありこまれやすいということを否定することはできません。
 そのほか、極端なものになると、本人が述べもしないのに「この際運転手としては当然徐行するとか、警音器を鳴らすなどして、衝突を避けるべきであり、また、そうすれば、十分事故を避けられたにもかかわらず、そのような注意を怠り、漫然と運転していたために、本件の事故を起こしたわけで、まことに申しわけなく思っております」というような紋切型のきまり文句が、調書の終わりの方に記載されているようなことも、これまた決して少ない事例とはいいきれません。

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