交通違反で懲役刑になるときは

交通事故をともなわない交通違反については、道路交通法によって、ほとんどが五万円以下の罰金ですまされます。
 この罰金の額をどうきめるかが問題ですが、たとえばスピード違反なら何キロ超過したか、過去に交通違反の前歴がどのくらいあるか、などをしんしゃくして決められます。
 無免許運転や飲酒運転など悪質な違反を繰り返すと、検察官は、もはや罰金ではきき目がないと認めて、地方裁判所へ起訴し、懲役刑を求めます。
 事故を起こさなくても、交通違反を繰り返しただけで、懲役三ヵ月とか四ヵ月とかの実刑の言渡しを受ける人も少なくはありません。

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自動車の運転者は、詐欺、泥棒などと違 って、本来は善良な市民です。ですから、普通は警察での取調べがすむと家へ帰されます。しかし盗んだ車を運転中だったり、酔っぱらって起こした事故やひき逃げの場合、そのほか大きい事故の場合などは警察に逮捕され、二日以内に身柄送検され、一〇日間の拘留で取り調べられ、さらに場合によっては身柄拘留のまま地方裁判所へ起訴されることもあるようになりました。
 交通違反にせよ、交通事故にせよ、検察官が罰金を求めるだけでよいと思うと、簡易裁判所では、略式命令と、即決裁判、正式裁判の三種の手続きによることになります。
 検察官が懲役刑や禁錮刑を求めようと思えば、地方裁判所へ起訴します。ですから地方裁判所へ起訴されたら、検察官が懲役刑か禁錮刑を求刑するだろうと予測して刑務所行きを避けるべく、執行猶予か罰金をねらって、大いに努力しなければならないということになります。
 地方裁判所は、たとえば検察官が懲役刑や禁錮刑を求刑しても、罰金でよいと思えば罰金刑をいい渡します。その反対に、簡易裁判所がこの事件は悪質だから罰金では不十分で、懲役か禁錮刑が必要だと思えば、自分では裁判できず、地方裁判所へ送らなければなりません。
 なお近年は、交通違反による傷害に対し て裁判所は相当にきびしい判決を出しています。その実例をつぎに示します。
 最高裁判所は、名古屋の女性ドライバーが刑が重いとして上告した事案に対し「いくら女性で一家の生活の中心であったとしても、一人の生命を奪ったことに対して禁錮一年と判決したことは不当ではない」という見解を示しました。
 名古屋地方裁判所は、昭和四一年九月七日に、定時制高校に通っている一学生に対して、業務上過失傷害と道交法違反を理由にして、禁鋼五ヵ月以上八ヵ月の不定期刑をいい渡しました。この事案は、事故の一週間も前からライトが故障していることを知りながら、そのまま被告が運転し無燈火のうえ夜間に六〇キロメートルのスピードで突っ走り、被害者を事故現場の四〇メートルも前で発見したのに、ついに事故を起こしたものです。この事件の求刑は、八ヵ月以上一年以下の不定期刑でしたが、考えてみれば裁判所もきびしい態度で被告をいましめているといえましょう。

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