数ヶ月たってから被害者が賠償を請求
私は数か月前乗用車を運転して交差点を通過しようとした際、突然側方からバイクを運転している若者が飛び出してきて接触しました。単車は転倒し若者も手足をすりむく程度の怪我をしたようですが、起き上るなり一言「すみません」といって立ち去りました。そんなぐあいで私も気にとめず運転を続け、それきり忘れていました。 すると数日前その若者の親族だと名のる者がはじめてあらわれて、若者は事故後一ヵ月位して急に死亡した、損害賠償を支払えとの強談判です。私に損害賠償の義務があるのでしょうか。
交通事故が発生したときは当該車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止するなど必要な措置を講じなければなりません。そして、警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷
者の負傷の程度並びに当該交通事故について講じた措置を報告する義務を要求されています。
これはいやしくも運転にたずさわる者の交通事故に際して、絶対忘れてはならないことです。これを怠るときは、救護措置、報告義務違反(いわゆるひき逃げ)として多くの場合逮捕され厳罰に処せられます。仮りに、事故が軽微でも、被害者の一方的過失にもとづくものでも同じことです。
交通事故によって他人の生命、身体を害したときは、運行供用者は原則として損害賠償の責任を負わなければなりません。ところで、損害賠償の内容および範囲ですが、これは被害者のこうむった損害額に、当該交通事故の原因となった加害者、被害者の過失の度合を斟酌して決定されることになります(過失相殺)。
そこで、交通事故が発生したときに注意することは、事故発生の原因や事故現場の状態、被害状況などをくわしく調査して、加害者と被害者の過失の程度や被害の状態をできるだけ正確に認識するようにします。損害賠償の交渉の前提となります。
なお、自己の利益になる点は堂々と主張し相手方の反省を求め、被害者側の過失については明確に指摘するとともに、これらを裏づけるいっさいの証拠資料は収集しておくよう努めます。後日訴訟になることも予想して証拠の収集保全を忘れてはなりません。とくに訴訟になった場合に、ものをいうのは事故直後の取調べや立会警察官が行なう実況見分の調書です。裁判になって事実認定の基礎となる重要な証拠は、この実況見分調書が九分九厘といっても過言ではありません。
事故発生地点E(衝突や接触した地点)、破損物(硝子片や泥片)の散乱状況、タイヤ痕、とくにスリップ痕の状況車両の損傷の部位や程度などは、当事者の過失の有無や程度を判定するのにきわめて重要な資料となるものですから、立会警察官に対して自己の主張を明確に述べるとともに、現場をもれなく調査してもらい、実況見分調書に正確に記載しておいてもらうよう努めてください。また、目撃証人などがいれば協力を頼み、住所氏名を害き留めておくほどの配慮も必要です。
事故の処理については、事故発生の原因、事故の実態などを十分認識したうえで、双方の過失の割合を勘案して、被害額を算定することが第一で、その後、誠意をもって話合い、できるだけ早い接合に示談解決をすべきです。
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