刑罰の種類と執行猶予の関係
刑罰は、故意または過失により、法律に違反し、社会の秩序を乱したり、第三者を傷つけたりした者に対して、国が社会秩序を維持し、同時に違反者の倫理を高めるこ
とによって、再犯防止を図るために言い渡すものです。
交通違反や突進事故で、裁判所でいい渡される刑罰には、つぎのようなものがあります。
懲役(実用と執行猶予がある)禁錮(実刑と執行猶予がある)罰金(執行猶予になることはほとんどない)科料
懲役と禁錮の区別はご存じだと思いますが、要するに懲役刑の囚人は、好かと好まざるとにかかわらず、刑務所で命ぜられた作業をしなければなりません。なまければ懲罰をくいます。
禁錮刑の囚人は、作業をしないで、用務所内で読書三昧にふけって修養することもできます。もちろん願い出れば、作業をすることもできます。
刑務所の全囚人のなかでは、禁錮囚の数は非常に少なく、それもほとんどが重大な交通事故を起こした人たちです。
刑務所の看守さんに聞くと、泥棒、詐欺などの懲役囚にくらべて、交通事故で禁錮刑をつとめている人は、とてもまじめで、事故を起こしたことをたいへん後悔しているといって、感心しています。
罰金と科料とは、金額に差があるくらいのものでたいした違いはありません。罰金は最低四〇〇〇円以上ですが、科料は二〇円以上四〇〇〇円未満です。
交通違反は科科ですまされることはほとんどなく、最近は、ほとんどが罰金です。罰金は早く納付しておかないと、労役場留置といって、刑務所などへ入れられて、作業を命ぜられます。
交通違反の罰金を滞納していると、検察庁の係官が収監状をもってきて、一せいに暁の急襲をします。そんなとき、あわてて罰金を払う人もいますが、運悪く手もとに
現金がないと、引っ張っていかれます。
懲役や禁錮には執行猶予という制度があります。罰金にも執行猶予ができるのですが、裁判所では、ほとんど罰金に執行猶予をつけません。罰金という刑が比較的軽い刑罰であるのに、そのうえ執行猶予をつけたのでは、きき目がないと考えるからなのでしょう。
さて、執行猶予になると、裁判所の定めた二年とか三年とかの執行猶予期間中、あらたに交通違反をしたり、他の一般犯罪を犯したりして処罰されないで、無事に期間が終わってしまうと、もう執行猶予が取り消されるおそれはなくなり、刑罰いい渡しの効力はなくなります。
さて交通事故を起こしたとき、禁錮刑が執行猶予つきでいい渡されるのと、罰金刑(執行猶予なし)をいい渡されるのと、どちらが重いことになるのでしょう。罰金だと懐からお金を出して払わなければならないのに禁鋼の執行猶予はタダですむから、そのほうがよいと考える人がいますが、とんでもないまちがいです。
法律上は禁錮刑は、たとえ執行猶予つきであっても、罰金刑より重いのです。それにハンドルを握るほどの人は、市民としての名誉を考えなければなりません。
禁錮刑には懲役刑のような破廉恥な性質はないのですが、それでも禁錮刑の執行猶子中は公務員になれないなどいろいろ社会生活上不利益をこうむります。また免許を取り消された人が、新たに免許を取りなおすときにも、考慮にいれられるかもしれません。
このような理由から、執行猶予がつけば、自分の懐がいたまないからなどと安易な考え方をしてはいけません。
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