違反現場で抗弁を聞いてくれない
交通違反の現場で、警察官にいろいろ弁解したところ、取り上げてくれないばかりか、交番にくるようにといわれました。私としては、正当なことをいっていたのです
が、これには応じなければならないのでしょうか。
交通違反の取調べも、犯罪の捜査という意味では、一般の刑事事件と変わりなく、その方法については、刑事訴訟法や警察官職務執行法などにもとづいて、行なわれています。
一般に、捜査は被疑者の身がらを拘束しないで行なう、いわゆる任意捜査が原則であり、とくに交通違反はその取締法規違反としての特質から、身がらを拘束されることはほとんどありません。ですから、違反者といえども、その意に反して連行された
り、答弁か強要されることはなく、また一度出頭してもいつでも退去することができます。また、取調べに応じたとしても、その内容については供述を拒むことができます。
しかし、交通違反の嫌疑を受けている以上、違反の成否について説明すべき道義上の責任があるばかりか、進んで取調べに応ずることによって事実を明らかにしたほうが、自己の利益にもなることですから、いたずらに非協力の態度をとることは避けるべきことでしょう。
ことに、交通違反の取締りに出会い、違反の嫌疑を受けることは、現に違反行為中の場合が多いのですから、現行犯として追捕される余地がまったくないとはいいきれません。逮捕され身がらを拘束されたとき
は強制捜査となり、いろいろな制約を受けます。もっとも、強制捜査の場合であっても、違反内容について供述を拒む権利があることには、変わりありません。
なお、現行犯逮捕は道路交通法違反でも罰金八千円以下の軽微な事件については、被疑者の住居もしくは氏名が明らかでないか、逃亡のおそれがないかぎり認められません。ですから、道路文通法一二一条に規定された罪については、現行犯逮捕の余地は、まったくないといってよいでしよう。
一口に交通違反といっても、その内容は多種多様です。総括的にいえば、自動車運転にたずさわる者が、自動車の運行に際して、道路交通法に定める各種の命令規定、あるいは禁止規定に違反するような行為をいいます。
道路交通法は道路交通の基本を定めたものであり、その内容は技術的なもので、それら違反が犯罪として処罰されるのは、交通秩序を維持するための、行政上の必要から、これを効果あらしめるため、法がとくに制裁を規定したからです。この点、殺人や窃盗が一般的に、反倫理的、反社会的性質を有する犯罪であるのとは、まったく異なったものです。もっとも、交通違反の取調べも、犯罪の捜査という意味では、一般の刑事事件と変わりはなく、その方法については刑事訴訟法や警察官職務執行法などにもとづいて行なわれます。
ただ、交通違反の前記のような性格から、その成否も技術的な要素が多く、また警察職員の現場確認により、はじめて問題とされるのがほとんどの場合であって、行為の客観的側面から違反の成否を争うことは困難な場合が多いのです。しかしながらなにぶんにも交通の頻繁な道路上でのことですから、違反の状態は後々まで残るものではなく、短期問のうちに調査した警察職員の結論には、事実認識のうえで誤解がないとはかどりません。このような場合には、堂々と事実を主張し、具体的に情況を説明して誤解を解くことが必要です。
交通違反の内容が軽微な場合には、取締警察官が現場で反則金額等を記載した書面を手渡し、違反者は七日以内に反則金を指定の場所に納付することによって、事件を完結させることができます。反則金は違反者に対する制裁金には違いありませんが、刑罰としての罰金ではなく、したがって反則処分は刑事処分ではありません。
警察官および検察官の捜査の結果、検察官において、起訴すべきものと認めたときは、交通違反にあっては、だいたい略式手続または即決裁判手続により処理されます。これらは、二〇万円以下の罰金または科料に処すべき事件について、簡易迅速な裁判をなすものですが、違反者のほうで納得がいかない場合には、略式手続の場合は略式命令の告知を受けてから、即決裁判手続の場合は即決裁判の宣告のあった日から、各一四日以内に正式裁判の請求をすることができます。正式裁判となると、刑事訴訟法に定める正式の公判手続が進行することになります。
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