事故現場で心得ておくべき事柄
車と車の衝突事故や接触事故などでは、どちらに過失があったか、よくわからない場合が多いのですが、後の交渉を有利に展開させるには、万一、事故を起こしたときには、どういうようにしたらよいのでしょうか。
運転している自動車が他の車とぶつかったとき、現場ではどのような態度で応対したらよいか、またその時の措置などについで考えてみます。
ぶつけても、ぶつけられても、あなたはつぎのことを思い出してください。機先を制して声をかけること、あなたのペースにひきこむこと、どならなくても、抗議はしましょう。この一言がこれからの交渉をあなたにとって有利にするキッカケとなります。
衝突、接触の瞬間は実際には誰でも驚いて、言葉も出ないものです。しかし、ともかくもこの言葉だけは、いち早く相手に投げかけておくのです。この言葉のもつ心理作用が不思議にひびいて、後の交渉を有利にみちびくわけです。つまり主導権を握ってしまうのです。こうしておけば、少々こちらに非があっても、それをカバーしてしまうものです。
また交渉には強気にでる場合と、下手にでる場合の二つがあります。つまり、自動車をぶつけた方からいえば、いかにもそれが過失であると相手に認めさせることだし、一方ぶつけられた方からいえば、事故は避けられ得たと主張することが、事故にあったときのコツです。
しかし、その前にかならずつぎのことをたしかめる必要があります。
まず相手のナンバーを覚えることが必要です。逃げられてもこれだけ知っていればなんとか見つけられます。
運転手の免許証をみせてもらうこと、本人であるかどうかもよく調べます。
車検証をみせてもらうこと。免許証と同様、いずれも記憶しておくことです。
同乗者か運転手の電話番号をきくか、名刺をもらっておく。
自分の住所、氏名、連絡先などを告げる。
これらは「お前が悪いんだ」ときめつけてからでは、なかなか相手も教えてくれないものですからどちらが悪いかの前にこれだけを、とりあえず処理しておくのがよいのです。
さて、これが終わってからはじめて、話し合いにもっていくのです。
逆にいうと、あなたが明らかに不利な立場に立だされているときには、これらのことを相手に告げる前に、「どちらが悪いか」の問題に入って、多少でも有利にもっていくということが必要なわけです。
もちろん、相手が悪くて名前も住所も教えないときは、ためらわずに警官を呼ぶことです。そのまま逃げるようなことになれば一一〇番です。
相手の身元が一応わかったならば、いよいよ本題です。いうまでもなく、はじめに述べたように、こちらが悪ければ、その原因がまったく過失からおきたことを認めさせることです。また相手が悪ければ、それをはっきりと認めさせるようにもっていくのです。
そのためにも、こちらが有利なことに関しては、その場で目撃者などに証人をお願いしておくのです。第三者がはいるとこれは大いに強調できるものです。証人の住所、氏名、連絡先もすかさずきいておきましょう。
できるならば警官がくる前に、相手にその非をはっきりと認めさせておくことです。それができないまでも、いうことは自信をもっていっておくのです。交渉がまとまれば、ここで示談というわけで問題は示談金の額です。
車両の破損がいくらの見積りかということは、なかなかむずかしいことですが、ぐずぐずしては相手がなにか開き直るかもしれませんので、一刻も早く決めてしまう必要があるのです。一番よいのは信頼できるかかりつけの修理屋にいって見積らせることです。
人体の傷害の場合には、治療費プラスアルファというわけで、このアルファ、つまり見舞金が往々にして問題になります。
さらに警官を呼ぶか、呼ばないかも決める必要があります。道路交通法七二条によれば被害者の救護や危険防止、交通安全など規定の措置を終えたら、ただちに警官に報告する義務があるとされていますが、実原にはそれが軽微の場合は、おたがいの示談でことを解決するのが普通です。
少額の示談金はその日に解決しておくことも大切です。多額の際には相手方の勤務先なり、主人なりの了解を得ておくことです。そしてはっきりと示談金の受渡し方法をきめ、受取らない間に示談にしないようにすることです。
ひとたび示談金をとりかわしてしまうと、原則としてあとでは変更できません。
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