行方不明の相手から取る方法
私は、今から一年ほど前に交通事故にあっためですが、傷もほぼなおったので、加害者運転手と示談をしようとしたところ、行方不明で連絡がとれません。そこでやむ
なく加害者運転手の雇主と交渉し、総額三〇万円を毎月三万円ずつ一〇回の月賦で支払うという内容の示談をし、公正証書を作成しました。ところがその後、雇主も行方不明となり第一回の月賦金も受け取っていません。雇主は借家住いですが、かなりの家財道具を持っており、運転手は田舎に土地を持っているとのこと。それらの財産より弁済を受けたいのですが、どうすればよいでしょうか。
この場合、なによりもまず運転手、雇主の所在を調査することですが、それには市役所、区役
所などへ行き住民登録原簿を閲覧することです。もっとも住所を移転しても住民登録を移転しないことも多いですから、そのような時には警察に所在調査を依頼するしかありません。それには、弁護士に依頼して弁護士会を通じて所在調査をしてもらうのがよいでしょう。しかし、いくら調査しても、結局運転手、雇主の所在が不明の場合でも、強制執行をする方法はあります。
まず始めに、雇主に対する公正証書をいかす方法を考えましょう。公正証書は相手方の財産を競売してそれにより弁済を受けうる、いわゆる執行力を特っています。したがって、公正証書に基づいて有休動産強制競売の申立てをすればよいのです。もっとも、強制競売の開始には、公正証書を雇主に送達しなければなりませんから、公正証書の公示送達の申立てをします。
さらに、三〇万円全額の弁済を受けうるかどうかは示談の内容いかんによります。すなわち、月賦の支払いを一回でも怠れば雇主は残額を一時に支払うという趣旨の条項があれば、三〇万円の全額について強制
競売を申立てられますが、そうでない場合には、弁済期のきた分についてしか競売の申立てはできません。
家財道具を競売しても三〇万円に達することはめったにありません。そこで、運転手の所有する土地を競売し、それから弁済を受ける方法を考えた方がよいでしょう。雇主に対する公正証書は運転手に対しては効力がありませんふら運転手に対して訴訟を起こさねばなりません。訴訟でも訴状が相手方に送達されなければなりませんから、この場合も、公示送達による送達を裁判所に申立てなければなりません。
ところで、訴状が送達されていながら相手方が裁判所に出頭しない場合には、相手方が原告(訴を提起した者)の言い分を全部認めたものとして、証拠による立証を必要とせず、全部勝訴の判決を得られますが公示送達による場合には、原告の言い分を証拠により立証しなければなりません。
したがって、あなたは証拠により立証しうる範囲でのみ、請求しうることになります。しかし注意すべきことは、雇主との間の示談内容には、拘束されないということです。つまり、証拠さえあれば三〇万円以上の請求をすることもできるということです。もっとも、雇主に対する強制執行により満足をえていれば、その額は控除しなければなりません。
最後に、相手方が行方不明の場合でも強制保険金は請求することができます。保険会社名、証明書番号などが不明の場合でも、自動車登録番号さえわかっていれば、陸運局でそれらは調べることができます。
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