賠償金を上手に取立てる訴訟のやり方

このごろでは、どの裁判所でも交通事故の第一審判決に対し、無条件の仮執行宣言を付けるようです。被害者としては、第一審判決さえもらえば、加害者が上訴しょうとどうしょうと、判決どおりの賠償額について、担保金を積んだりしなくても、判決が確定した場合と同じように、すぐさま、強制執行にはいっていくことができるわけです。
 この無条件の仮執行宣言は、現在の交通事故の実状と、確定判決までの所要期間にかんがみ、より当事者間の公平を全うするための取扱いであって、被害者保護のために決定的な働きをするものです。

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判決例の大勢からいって、これからに、どの裁判所においても例外なしに、無条件の仮執行宣言を付けるようになると思われます。
 近年の東京地裁民事交通部においては、交通事故による損害賠償請求訴訟に対し、早いので一〇か月ぐらい、長いので一年二か月ぐらいの判決が一番多いようです。
 その件数を考えに入れると、平均一年前後ということになりますが、見事な実績というほかありません。以前までは考えられないほどの早さであり、裁判所のなみなみならぬ努力の結果です。
 また、当事者の訴訟代理人である弁護士の協力も少なくないでしょう。何年も先の一〇〇万円より今すぐの一〇万円です。この実績が、交通事故の正しい解決に果たす役割りというものは、いくら強調しても強調しすぎるということはないでしょう。民事法の立法目的は、こうした実績の積み重ねによって、一歩一歩と、よりよく果たされていくことになるのです。
 法律上みとめられる損害賠償の債権の金額というものは、このようにして、一年くらいの期間で現実のものとなってくるわけです。
 自動車責任の誕生によって、資力のある者が賠償義務者になるようになったことをも考え合わせると、無条件の仮執行宣言が付いた第一審判決が出た以上、加害者はさらに差押えなどの強制執行の手間をかけさせないでも支払いに応じるでしょう。
 したがってほとんどの場合、訴状を出してから一年あまりもすれば、法律上の債権額そのとおりのものがそのまま現金となって入手できるということになるわけです。
 加害者側が、たとえ訴訟を支払いの引延ばしに利用しようと思っても、もはやこの意図は断ち切られたというべきです。一年ぐらいのことなら加害者側もそれなりに訴訟費用がかかることでもあり、かえってマイナスになってしまいます。
 加害者側はすくなくとも裁判所の詔める賠償額ぐらいは、自分自身の利益を図るためにも進んで話合いの段階で履行するようになる、といった望ましい風潮になることも、夢ではなくなりつつあるのです。

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