示談と裁判ではどちらが有利になるか
近年、日本でも億を超える判決が出るようになりました。高額な賠償金の判決を得るためには、被害者側で、その金額の損害があったということを、証拠によって証明しなければなりません。そのため、判決を得るまでに時間や費用がかかることは事実です。
被害者側が苦労して二〇〇〇万円とか三〇〇〇万円とかの高額の賠償金を認める判決を得ても、加害者側に支払能力がなかったりすると、判決は絵にかいた餅になってしまいます。
示談の場合に、加害者側の支払う示談金は、法律上加害者はいくら損害賠償をすべきかを基準にして決めるわけですが、実際には加害者がどのくらいの賠償能力があるか資産はどのくらいか、任意保険に入っているかどうかなどが、重要な要素になってきて、それが前提となって示談の交渉が行なわれます。
たとえば、加害者に資力がないときは、本来の賠償額より低額にしたり、分割払いにしたりします。そうすることによって、被害者側としては、金額そのものは低額であり、不満であるとしても、確実に支払ってもらえますから、絵にかいた餅にならないでしょう。また裁判と違って、やっかいな立証活動(証人や証拠を集めて証明すること)をしないですみます。
しかし、欠点はあるにしても、判決の場合は、すべての事実関係がはっきりし、それに基づいて、裁判所が妥当だと思う金額を示すのですから、賠償額としてはもっとも公平です。そして、加害者に支払い能力があれば、たとえ高裁、最高裁へいっても、確実に取れるわけです。
統計によりますと、示談でまとまった示談金よりも、判決の賠償金の方が高いようです。ですから、加害者側に資力があるとか、任意保険に加入しているにもかかわらず、安い示談金を押しつけてくるようならば、裁判に持ち込んだ方で有利です。
裁判の場合ですと、代理人として登場して来るのは弁護士に限られます。示談の場合は、示談屋や会社の事故係などが加害者側の代理人としてやって来ることがあります。それらの人は、弁護士と違って資格制限がなく、また監督や指導する機関もありませんので、被害者側としては、十分な代理人対策をたてる必要があります。
加害者側が代理人をたててきたときは、まず、委任状をみせてもらうか、加害者本人に問い合わせて、正式の代理人かどうか確かめます。代理人と称する者と示談をしても、その者に代理権がなければ、その示談は無効です。
タクシー会社や運送会社には事故係がいて、示談にやってきます。タクシー会社や運送会社は、往々にして任意保険に加入しておらず、強制保険でおりる保険金の範囲内で示談をとりまとめ、会社のふところを痛めないようにするのが、事故係の腕の見せどころという傾向があります。
そのために、事故係は「そんな損害の賠償は法律上できないことになっている」とか、「これだけなら今すぐ支払うが、それ以上請求するなら、裁判で争う」などといったりして、被害者側はついつい低い賠償額で示談してしまいがちです。
そこで、示談交渉に入る前とか、加害者側から示談金の呈示があったときには、弁護士会、市役所、区役所、保険会社などで行なっている交通事故の法律相談所に行って、法律的に正当な損害賠償額、つまり世間相場を調べておくことが大事です。そして、その後に交渉には入るべきです。
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