示談書を作成するときの注意
私は甲の運転するA社の車に衝突され、全治一ヵ月の怪我をしました。そこでA社と交渉し、治療費全額のほかに慰謝料を月賦で払ってもらうことにことになりましたが、示談書を作成する場合どんな点に注意したらよいのでしょうか。
示談が成立したと同時に賠償額全額の支払いを受けるのであれば、極端にいうと、示談書を作成せず、領収書だけでもとくに差し支えないことになりますが、分割払いとなったときなどは示談書の作成にあたっては、十分注意が必要です。
というのは、分割払いということは結果的にみると、示談書によって加害者にお金を貸したのと同じことになりますので、お金を見ず知らずの人に貸すときと、まったく同様の配慮が必要なのです。
そこでまず第一に注意すべきことは、はたして加害者にそれだけの金額の支払能力(財産、信用)があるかどうかということです。
もし加害者がまだ若いとか、あるいはあまり財産がないとかいったときは、加害者のほかに適当な保証人をつけてもらわなければなりません。
金額がはるときには加害者または他の人の不動産に抵当権を設定しておくとか、示談書を公正証書で作成しておくといったことも必要でしょう。
理屈だけから考えれば、賠償額を全額一時に払ってもらう、あるいは分割払いとしたときは確実な保証人をつけ、抵当権を設定し、しかも示談書を公正証書で作成しておくといった方法が一番確実であることはいうまでもありません。
しかし示談というのは、あくまでも当事者双方の話合いにより、お互いの譲歩の結果成立するもので、自分の立場ばかりを主張するのも考えものといった場合も少なくありません。
このようなわけで、どのような形で示談をしたほうがよいかということは、ケース・バイ・ケースで判断しなければならないことになるのですが、かといって、示談をしたがために、かえって不利な結果とたってしまったという例もありますので、少なくとも連帯保証人をつけるといったことは必要でしょう。
幸いに最近は、交通事故相談所も各所に開かれており、また各地の弁護士会には交通事故処理委員会もありますので、いちおうこれらの相談所で、専門家の意見を聞いてから、示談をするというようにしたほうが賢明だと思います。
つぎに、示談書に記載すべき事項ですが、この示談書はこれだけのことを書いておかないと法律上無効となるといったように、法律で一定の書式がきめられているものではありませんので、どんな書式でも、極端にいえば、前述のように単なる領収書、あるいは名刺の裏にちょっと書かれたメモ程度のものでも示談書になりますが、せっかく作成する以上、少なくともつぎの事項は記載しておきたいものです。
(1) 加害者、被害者、自動車所有者名(運転手がその自動車の所有者でないとき)
(2) 事故の日付、場所
(3) 加害車両の車種、番号
(4) 被害状況
(5) 示談内容、支払方法(とくに示談できめられたもの以上は今後いっさい請求しないといった約束をいれるかどうか)
(6) 示談書の作成年月日
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