交通事故の被害者が事故現場でとる措置

被害の回復を望むなら、損害賠償の相手方としても、また種々の保険金の支払いを受けるためにも、加害者がだれであるかということを、まず確認しておくことが必要です。
 加害者としての責任を負うのは、その事故を起こした運転者自身はもちろんですが、その運転者を雇って、実際に仕事をさせている雇い主(会社)や商店なども当然含まれます。
 そして、多くの場合、運転者には資力がないため、損害賠償の請求は雇い主とか、その運転者の勤務する会社に対してなされるのが現状です。
 したがって、被告者としては、たんに車両に明示された登録番号だけを控えておくのではなく、運転免許証の提示を求めて、運転者の氏名、年令、住所などを確認すると同時に、使用者(雇い主)の名前とか住所などもはっきりと確かめておくことが必要です。
 そして、とくに使用者に対し請求する場合は、どの程度の賠償能力があるかを探るためにも、電話するなり出掛けるなりして、会社の規模を調べ、同時に、違いなくその運転者がその会社雇われているのかをも、はっきりと確かめておくことです。
 近頃は、対税上の考慮から、電話一本、机一つの商売でも会社組織を利用している場合がかなりありますから、実態の調査は、とくに必要です。
 また登記もされていない幽霊会社も相当あるようです。こんな場合は、会社自体も相手にできませんから、運転者とか、代表者個人を相手にするほかありません。
 ほとんどの場合は、運転者かその雇い主が加害者としての責任を負いますが、まれに、車の所有者が別にあるときは、その所有者も同様の責任を負うことがありますから、所有者も碩かめておくほうがまちがいがないといえるでしょう。

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自動車事故があった場合、事故現場ではいろいろとその時の模様を調書にとったり、現場の確認のために実況見分書などが作成されるようですが、後になって被害者の言い分と違う場合が、時々あるとのことですが、このような紛争が生じないようにするために、状況をより正確に報告でき、証拠になるようにするには、どのようにすべきでしょうか。
 どういう情況で事故が発生し、被害を受けたかは、後日相手方(加害者)が争う場合が多いので、とくに正確に確認し、かつそれを証拠で裏付けられるよう保存しておくことが必要です。
 現場の情況については、警察に届け出れば、実況見分調書という警察で作成する調書の上で、正確に残されます。
 ですから、へたに素人が現場をいじくるよりは、すぐに警察に連絡することです。警察の介入によって、警察から「事故証明書」がもらえます。この証明書は、保険金の請求のために必要となります。ただ、交通量の激しい場所では、警察官が現場に到着するまで、事故現場をそのままの状態で置くことが不可能な場合もあります。
 したがって、こんな場合は、自分で、または同伴者、目撃者の記憶によって、警察官に事故の様子を説明しなければなりません。ところが、こんなとき、加害者は、できるだけ自己に有利な説明をしがちです。
 たとえば、「被害者が突然飛び出してきた」とか、「徐行しながらきた」とかいう弁解です。これを覆すため、第三者的な立場にある目撃者の証言が得られれば、非常に好都合です。
 また、後日、民事上の損害賠償請求訴訟などで事故の模様を証言したり供述したりするのは、半年から一年もたってからの場合がほとんどです。したがって、多くの場合、細部の記憶が不鮮明になり、正確な証言ができなくなります。
 とくに加害者が争っているときは、加害者の供述に引きずられ、記憶に迷いもでてきます。だから、できるだけ事故直後に、その詳細をメモして、これを第三者に確認してもらい、日付も入れておくことです。
 「警察で調書を取ってもらったから、その必要はないだろう」と思われるかもしれませんが、民事の裁判になる頃は、相手方にも余裕ができて、細かい点で、警察での供述の矛盾や不備を利用して争うことが多いのです。そうなると、双方立会いの現場検証も重ねて必要となるし、細かい点での記憶も、改めて、思い出さなければならなくなります。
 また、警察が多忙であったり、そのほかの理由から、目撃者の供述調書まで取られていない場合もあります。したがって、もし承知してくれるなら、せめて目撃者の住所、氏名くらいはメモしておく必要があります。
 そうすれば後日の民事訴訟で、事故状況につき加害者と被害者のいい分が食い違って、反証する必要に迫られたときでも、目撃者を証人として呼ぶこともできます。
 とくに近ごろのように、道路工事や路幅の拡張などがひんぱんな時は、事故後でもよいから撮影しておくことも必要です。このことは、現場が工事中であればなおさらです。警察では、大きな人身事故でもないと、現場写真までは撮りません。裁判所が半年くらいたって、現場検証をしてみたらまるで道路の様子が変わってしまって、どこでどうなったかわからないというのでは困るからです。

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