示談屋に渡したのに被害者から請求された

私は、小さな鉄工場を経営していますが、先日、従業員が使いの帰りに、バイクで子供をはねてしまいました。私は示談をしたこともないので、Bに一切をまかせたところ、五〇万円で話がついたというので、彼に小切手を渡しました。それから半月後、被害者の父親から、催促の手紙がきて、Bが横領していることがわかりました。どうしたらよいでしょうか。

示談屋や事件屋に示談金をだましとられた場合の対策は、交通事故の被害者側がダマされた場合も、加害者がダマされた場合もだいたいにおいて同じです。
 加害者としてもだいたいは被害者について述べた前問の場合と同様です。
 つまり、示談屋を業務上横領罪、詐欺罪、弁護士法違反などで告訴すること、あるいはまた、告訴するぞといって、いったん示談屋に渡した金銭をかえすように請求することです。
 なぜかというと、加害者から示談屋に払った金を、示談屋から被害者に手渡さない場合でも、示談屋に払ったというだけで法律上も、被害者に払ったことになるか、という問題があるからです。

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ちょっとむずかしい問題ですが、民法によると「何人といえども同一の法律行為につき当事者双方の代理人となることをえず」とされており、つまりこういう場合には、法律上は双方代理といって、これに違反した場合には、その代理人には代理権がないも同然ということになっております。
 ですから、加害者から示談屋に金を払っても、示談屋が横領した分は、被害者に対する支払いとしては無効ということになりましょう。
 したがって、加害者としては示談屋に払った後に、被害者から請求されればこれにも払わなくてはならず、二度払いを強いられることになります。もちろん、先に示談屋に払った分は返してもらえるはずですが、前述したように示談屋には、資産のあるような者はほとんどいませんから、これも事実上困難でしょう。
 だからこそ、示談屋などに金を払うと、大へんなことになるわけです。加害者としても、内容証明郵便で早急に委任契約を解除し、一方、最寄りの警察署や検察庁に刑事告訴の手続きをとり、場合によっては民事手続きにも訴え、とにもかくにも、示談屋から金をとりもどして、あとは当事者同士の話合いにするか、あるいは法律専門家の弁護士に相談するということが、肝心だと思います。
 それともう一つは、こうした場合にこそ、民事調停という制度を利用してみる値打ちがあると思います。
 というのは、お話の通りだとすれば、たしかに間が技けていましたが、しかしそこは素人の悲しさで、考えようによっては同情に値する事情もあるようです。
 ところで、民事調停というのは、要するに簡易裁判所の調停委員という第三者をまじえての話合いですから、あまり法律一本槍の話ではなしに、お互いの事情をさらけ出し、お互いに譲歩し合うことによって事件を解決するというねらいを持っているわけです。
 ですから、そのときには、被害者を相手方として、最寄りの簡易裁判所に調停の申立てをし、事情をよく話して調停委員からも被害者によく説得してもらえば、仮りに二重払いになったとしても、その金額はいくらか負けてもらえるかもしれません。

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