訴訟で損害賠償を請求するときの心構え

私は、相手方の不注意で自動車事故に合い、三か月間入院し、その後も会社を休んで現在に至っています。もちろんその間には何度も損害賠償について話合いをしたのですが、相手方は一向に誠意をみせてくれません。そこで、いよいよ訴訟で、損害賠償を請求しようと思います。いったいこのためにはどんな心構えをしておいたらよいのでしょうか。

 示談や調停で解決がつかなければ、事故の被害者としては、訴訟をし、請求権を裁判所に公認してもらい、さらには強制的に加害者側の財産を差押えしてでも損害賠償をしてもらうことになります。
 ここでは、訴訟のための準備を考えてみます。この事前の準備のよしあしが訴訟の結果を左右することにもなりかねません。この訴訟のための準備にはどんなことがあるかというと、
 (1) 今までの経過を整理する
 これは事件を弁護士に依頼するにも、また裁判所に出すにしても、大変に重要なことです。しろうとの方が訴訟に当面した場合には、よほど頭を整理してからでなければなりません。
 (2) 自分に有利な証処を集める
 前にもいろいろと述べられていますが、交通事故の現場の再現は不可能ですが、過去に存在した証拠を一つ一つ収集しておくことは、これからの訴訟に大きな影響を及ぼします。事故現場の写真など証拠になるものや、ちょうどそこにいた目撃者など証人として頼める人は必ず裁判で利用できるようにすることです。
 (3) 弁護士は熟練者に
 訴訟は本人でもできますが、もし自分で訴訟をせずに弁護士を頼むときは、多少なりとも自動車の知識をもっている人のほうがよい場合が多いでしょう。自動車の構造、機能まで調べて訴訟ができれば、鬼に金棒です。

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被害者が、加害者に対して自分の損害を完全に立証して、その弁償を求めても、加害者のほうが、いろいろと言い逃れをして、なかなか弁償に応じようとしない場合があります。
 このような場合には、被害者は、結局、裁判によって黒白をつけて、それでも加害者がまだ支払わなければ、加害者の財産を差し押えて、損害の回収をはかるよりほかありません。
 加害者のいい分が明らかに間違っているとか、理由にならない言い逃れを固執するからといって、加害者をおどしたり、暴力に訴えて弁償させるなどの方法に出ますと、逆に被害者が脅迫とか恐喝などの刑事責任を問われることになります。
 裁判所の手を借りる方法としては、訴訟と調停とがあります。主として前者は話合いの余地のない場合などに、後者は、国の仲裁を受ければまだ話合いの余地が残されている場合などに利用されます。
 調停の場合には、法律の専門家でなくとも、調停委員のリードによって、話合いを進めてゆくことは、それほど困難ではありませんから、とくに弁護士などを頼む必要は、それほど強くありません。
 訴訟の場合には、裁判所で、相対立する双方の主張を、第三者である裁判官に、いかに自己に有利に納得せしめるかが勝敗の分れ目ですから、かなり専門的な技術が必要とされてきます。
 他方、裁判所も、一人の裁判官が何百件もの事件をかかえ、午前一〇時から正午までの二時間くらいの間に、一〇件近い審理をしますから、とてもしろうとに、「こういう書面を、こうして出しなさい」などと、説明してくれる暇もありません。
 また、「こういう主張をしろ」とか、「こういう証拠を出せ」とか指示することは、公正中立であるべき裁判官としては、できないことがらでもあるのです。
 したがって、被害者が原告として、自分の主張を十分に証拠によって法廷に示すためには、やはり弁護士を選任して、モの手続きを任せるべきです。よく、代書人(司法書士)に訴状だけ書いてもらって、被害者が自分で訴訟を進めている場面を見かけますが、ほとんどの場合、その手続き進行に困難をきたし、十分の主張も立証もできないでいます。
 まして、勝訴した後も、加害者がなお支払いをしなければ、めんどうな強制執行までしなければならないのですから、なおのことです。
 しかし、たとえ事件を弁護士に任せるにしても、被害者も一応、「民事裁判とはこのようにして進められるのだ」ということのあらましくらいは知っておいたほうが、被害者自身が集めなければならない訴訟のための資料を選択するときにも役立つでしょうし、そのほかいろいろの面でなにかと便利だと思います。

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