刑事責任を示談交渉でどう利用するか
私は脇見運転をしたため、自転車に乗った女性をはね飛ばし、全治ニカ月のケガをさせてしまいました。その人のケガも治りましたので、示談の交渉をしておりますがつい先日、業務上過失致傷罪で起訴したという起訴状が届きました。示談をすると、刑事の裁判にどういう影響をするでしょうか。示談をするとしたら、いつまでにするのでしょうか。もし示談できなかったら、どうなるでしょうか。
交通事故によって人を死なせたり負傷させたりしますと、通常、業務上過失致死罪または業務上過失致傷罪という犯非にあたり、懲役か禁錫、または罰金に処せられます。人身事故を起こした運転手が、無免許だったり、酒酔いであったりすると、業務上過失致死傷罪のほかに、道路交通法違反という犯罪になります。
事故が発生したら運転手は警察に届けなければなりません。警察は捜査を開始し当事者や目撃者から事情を聴き、現場の検証をして、その事件を検察庁に送致します。
検察庁では、検察官がもう一度調べ直して処分を決めます。起訴するかしないか、起訴して罰金刑求めるか、禁錮か懲役刑を求めるか。これは検察官の決める仕事です。裁判所は、検察官の起訴した事件について、審理し、判決を言い渡します。
刑罰には、懲役、禁鋼、罰金とがあります。懲役も禁錮も刑務所に入ることです。ただ懲役の場合は、刑務所内で、強制的に労働させられるのですが、禁錮の場合は、作業をするかどうかは、その人の自由とされており、禁錮の方が、懲役より軽い刑罰です。
いずれの場合にも、裁判所は執行猶予をつけることができ、執行猶予がつくと、一定期間内に犯罪を犯さなければ、刑に服さなくてもよくなります。
被害者との間で、円満に示談が成立し、被害者として、もはや積極的に加害者の処罰を求めていないということになれば、そのことは刑事処分のうえでも考慮され、示談をしていない場合に比べて、刑事責任が軽くなります。
起訴される前に示談ができたときは、加害者は、示談書や領収書を警察や検察庁に提出することです。示談の有無は、検察官の判断に大きな影響を与えます。起訴か不起訴か罰金か懲役かというボーダライン上のケースの場合、示談書の存在は有利に働きます。ですから、検察官が処分を決める前に示談をするのが、加害者に最も有利なわけです。
起訴されたら、なるべく早く示談をして判決を受ける前に、示談書を裁判所に提出してください。示談の有無は、懲役刑や禁錮刑によって実刑になるか、執行猶予となるかを決める一つの要素です。
近来、交通事故に対する刑事処分はきびしさを増す一方ですので、示談ができていても、必ず執行猶予というわけではありません。特に、無免許、酒酔い、ひき逃げのすべてを伴った死傷事故、無免許または酒酔いを伴う死亡事故、信号無視を伴った死亡事故の場合は、まず実刑です。
実刑となった場合でも、示談ができている場合の刑期は、示談ができていない場合の刑期より一割から五割くらい短かくなっています。
被害者が悪質で、法外な損害賠償を要求しているため示談が成立しないことがあります。そのときは、その経過を裁判所に報告します。裁判所は加害者の誠意を考慮してくれます。
交通事故の被害者はどのような請求ができるか/ 傷害・物損事故の損害賠償請求/ 損害賠償を解決する方法/ 交通事故の解決方法を選ぶべきポイント/ 交通事故の被害者が事故現場でとる措置/ 交通事故の損害額を確実に請求するための措置/ 被害者が直接請求できないとき/ 損害賠償の交渉相手はどう決めるか/ 加害者が死亡したときの賠償請求は/ 賠償義務者が複数の場合の請求の相手は/ 賃借り車の事故の責任は誰にあるか/ 販売会社に車の所有権がある場合の責任/ 未成年者の事故の責任は誰にあるか/ 示談にはどのような効力があるか/ 示談と裁判ではどちらが有利になるか/ 交通事故の示談をする前にどのようなところを利用するか/ 交通事故の示談交渉時期はどう決めるか/ 交通事故の示談交渉前に必要な書類/ 交通事故の示談交渉中は強制保険はもらえないか/ 保険会社を示談交渉の相手とするときの心得/ 加害者が示談の交渉に応じないときは/ 示談の交渉を弁護士に頼みたいとき/ 後遺症の心配があるときの示談の進め方/ 刑事責任を示談交渉でどう利用するか/ 示談書を作成するときの注意/ 示談が成立するとそのやり直しはできないか/ 示談交渉が進展しないときはどうするか/ 示談の成立後に傷が再発したときの賠償請求は/ 示談屋や事故屋に騙されないコツ/ 示談屋が賠償金を渡してくれないとき/ 示談屋に渡したのに被害者から請求された/ 示談屋に騙されたときの告訴はどうするのか/ 調停や和解による解決の要点/ 調停や和解はどのような場合にするか/ 調停の呼出しを受けたらどうなるか/ 訴訟で損害賠償を請求するときの心構え/ 管轄裁判所と裁判手続き/ 賠償金を上手に取立てる訴訟のやり方/ 仮処分により賠償金の取立はできるか/ 訴訟費用がないときの賠償請求は/ 弁護士費用を相手に請求できないか/ 示談のときに確実に賠償金を取る方法/ 分割払いで賠償金を取るときの注意/ 示談後に会社が倒産したときの取立/ 行方不明の相手から取る方法/ 身元保証人から賠償金を取立てたい/ 強制執行で取立てるにはどうするか/ 強制執行にはどのような障害があるか/
copyrght(c).道路と交通の豆知識.all rights reserved