調停や和解による解決の要点
私は交通事故に会い、加害者に対して、損害賠償を請求しているのですが、全然払ってくれません。こちらはなんとか裁判にかけてもとりたいのですが、こういった取
立てには、訴訟のほかにも和解や調停で、うまくやれるとのことですが、こういった制度の利害は、どんなところにあるのでしょうか。
訴訟制度は、我々の権利を最終的に、かつ最も強力に保護し実現するものとして欠くことのできないものですし、常に厳正公平な裁判がなされるということは、社会の秩序を保つ根源であるともいい得ましょう。しかし、訴訟制度には、その性質上避けることのできないつぎのような短所があります。
第一に、裁判は、法律に忠実で、論理的に正確な結論を出さねばなりませんから、当然杓子定規な判決をすることとなります。裁判が融通のきくものであっては、かえって権利の保護が怪しくなり、社会も混乱しますから、やむを得ないことですが、それではぐあいの悪い場合もあります。
第二に、裁判は、公正にしかも慎重にされなければならないという要請から、その手続きが厳格詳細に規定されているので、法律家でなければ、複雑な訴訟技術を自在に駆使するわけに参りません。
また控訴上告まで含めますと、日時と費用とが相当にかかるのを覚悟しなければならなくなります。
第三に裁判は勝つか負けるか、すなわち全部かゼロかという、一刀両断の解決をするものです。しかし、敗訴側にも全然いい分がないわけではないことがあり得ますし、どちらの主張を認めるべきかが非常に微妙な事件もあるので、必ずしも判決でズバリと割り切るのは適当でないという場合がしばしばあります。
調停は、訴訟制度のこのような欠点を補って紛争の妥当な解決をはかろうとして設けられた制度です。裁判所で行なわれますが、裁判官が裁判をするのではなく、あくまで当事者同士の話し合いで解決するのをたてまえとし、裁判官や、弁護士をはじめとする民間の学識経験者から任命された調停委員は、話合いを斡旋し、良識ある方向にリードする役割をもっています。
その特色としては、第一に、調停は法律的判断そのものではなく、あらゆる事情や人情までも十分考慮して、どうすれば今後の生活関係が円満にいくだろうかという観点からなされますから、杓子定規ではない、実清に即した解決がのぞまれます。
第二に、調停手続きは、担当の裁判官や調停委員と、双方の当事者やその代理人、さらに利害関係人などが一堂に会して、ひざをつき合わせて話し合いという形で進められます。したがって、訴訟手続きにくらべると、格式張らず、気軽で話やすく、一般に迅速で費用も安くすみます。
しかし、これらの長所の反面、つぎのような短所もありますから、そこはあらかじめ承知しておいてもらわねばなりません。
第一に、杓子定規でないということは、法律的にルーズに流れやすいということにもなりかねませんから、当然主張できる一〇の権利を、互譲の精神というようなことで、七か八で我慢させられてしまうことさえあります。
第二に、話合いの成立を急ぐあまり、手続きが粗漏になって、肝心の事件の実情が十分解明されないですまされてしまうおそれがあります。
第三に、訴訟のような強制力がありませんから、絶対に自己の主張を譲らない頑固者や、無反省で非協力的な者がある場合には、調停を成立させることができず、結局
は訴訟手続きによらなければならないこととなります。
つぎに、和解ですが、ここで説明する和解は、広義では裁判上の和解です。正しくは「起訴前の和解」普通は「即決和解」といわれているものです。
これは、調停委員のような公的機関の介入なしに、あらかじめ当事者聞で話合いをして、和解策について合意ができたとき、これを裁判所へもっていって、いちおうその検討と仲介を求めて、和解調書を作成してもらうものです。
この和解が調停と似ているところは、話合いによる解決、したがって、黒白をわりきるというよりは、実情に応じて双方が譲歩しあってまとまるという性質のものであること、和解調書も調停調書も、ともに債務名義となるという点にあります。
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