交通事故の示談交渉時期はどう決めるか

自転車に乗って買い物に行く途中、ダンプカーにはねられて、大腿部骨折で入院して、ニカ月になります。完治するまで、あと三ヵ月ほどかかるとのことでが、これまで、加害者運転手は一度見舞いにきただけで、治療費すら支払ってくれません。示談の交渉を始めたいと思いますがいつ頃から始めたらよいでしょうか。またどのように切り出したらよいでしょうか。

これは損害の範囲が明確になるまで示談しないことが第一です。
 被害者が死亡した場合には、それによって損害額が確定しますから、いつ示談をしてもかまいません。被害者側としては早い方がよいでしょう。
 しかし、負傷した場合は、治ってから示談をします。あせって、入院加療中に示談をしてはいけません。というのは、負傷のときの慰謝料は、入院期間、通院期間、通院実日数などによって計算されます。ですから、まだ入院中ですと、正当な慰謝料を計算できないのです。

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また、三ヵ月の入院加療を要すると診断されたので、それにもとづいて入院中示談をしたところ、予想以上に治療期間が長びき、結局、六ヵ月も入院していたとか、あるいは予期に反して容易に完治せず、それどころか後遺症が残ったということがよくあります。いったん示談をしてしまうと、その後に損害額が増加しても、原則として示談のやり直しはできません。
 したがって、医師が治ったとか、治療する必要がなくなったと診断してから示談をしてください。なお、入院や通院が長びくことがあります。そんなときは、治療費や入院費を、そのつど加害者に支払わせるほか、月々の休業補償も支払ってもらい、示談は傷が治ってからにすることです。
 つぎに、時効に気をつけなければいけません。
 車に追突され首を打った人で、医師からも治ったと診断されたのに、いつ後遺症が出るかもしれないと心配して、全然示談をしようとしない人がいました。このような場合のように、あまり長い期間放っておくと時効にかかり、損害賠償を請求できなくなることがあります。
 損害賠償請求権は三年間を経過したときに、時効によって消滅します。強制保険の保険金の請求権は二年間を経過したとき、時効によって消滅します。
 第三番目に、示談交渉前の注意ですが、まず、その事故の損害賠償金はいくらが妥当であるか調べます。交通事故の本はたくさんありますが、本からの知識はどうしても限界があります。弁護士会、区役所、市役所、保険会社などで交通事故の法律相談をやっています。たいてい無料です。そこに行って妥当な賠償額を教えてもらうとよいでしょう。二、三ヵ所まわったら、ほぼ世間相場がわかります。
 そのつぎに、加害者の資力や任意保険に加入しているかどうか調べます。任意保険のことは加害者に聞きます。もし加入しているとしたら、どこの保険会社に、いくら加入しているか確認してください。
 加害者側の資力を調べる方法はなかなかやっかいです。興信所などの調査機関を頼むのもよいでしょう。また、そこまでしなくとも会社の場合であれば、従業員数、工場数その他の会社の規模で、だいだいわかります。
 最後に示談交渉の開始の仕方です。
 賠償金がわかったら、それを加害者側に請求するわけです。ただ請求する際は、自分が法律上正当だと思う金額より多少増額して請求することです。交渉を重ねると、だんだん値切られ、譲歩せざるをえなくなります。
 請求は、内容証明郵便に書いて加害者に送ります。同じ内容でも、普通の手紙と内容証明郵便とでは、相手方に与える威圧感が全く違います。内容証明郵便で出すと、悪どい加害者でも、たいてい何らかの応対をしてきます。

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