損害賠償を解決する方法
損害賠償をどのような方法により、あるいはどのような手続きを踏んで解決していけばよいかをつぎにみていきましょう。
損害賠償を請求し、解決するにはつぎ
のような方法があります。
(1) 示談 - 当事者の話合い
(2) 強制保険の被害者請求 - 死亡、負傷事故のとき
(3) 調停 - 簡易裁判所
(4) 訴訟 - 地方裁判所
示談は当事者同志が話し合って、双方が納得できる条件で話をまとめて解決するものです。これが手数も時間もかからず、簡単にすむ一番望ましい方法です。最近では裁判所が、葬儀費、治療関係の雑費、慰謝料等について、なるべく定額で算出しようとしており、さらに加害者被害者双方の過失割合も、衝突時の状況によって定型的、定率的に考えようとしていますので、当事者双方が事故関係の事実認識にくい違いがないときには、裁判所の基準に従って条件を話し合って示談によって解決するのが利口な処理の仕方です。
ただし、分割払いの約束を守らないような場合、当事者だけで作った示談書では、すぐに強制執行ができず、調停、訴訟の裁判上の手続きをしなければなりません。
そこで、分割払いなどの条件で示談するときは、公証人に額んで公正証書を作ってもらったり、簡易裁判所に即決和解の申立てをして和解調書を作ったりします。これらの書類があれば、分割払いを約束通りにしないときは、すぐに強制
執行ができるのです。
また、加害者側が保険会社の人に示談交渉をさせる場合がありますが、保険会社の基準は裁判所より低いので、保険会社の人の言うなりにならないで、弁護士今や都道府県等の交通事故相談所で相談して、不当な条件で示談しないように気をつけなければいけません。
もちろん、資格のはっきりしない、いわゆる示談屋にだまされないように、そういう人を相手にせず、こちらもそういう人には願まないようにすべきです。うっかりすると保険金や示談金を横領されたりします。
加害運転者は刑事責任を少しでも経くしてもらうために「早く示談書を作ってくれとか、示談書を作ってくれなければ賠償金を払わない」などと言ってくることがあります。
しかし、被害者としては示談書を作らなければ賠償を請求できないということはないのですから、納得できない条件で示談書に印を押してはいけません。
強制保険の被害者請求は、人身死亡負傷事故、とくに死亡事故の場合には、被害者側がなるべく早くすべきことです。強制保険は人身事故について被害者の損害の最少限を保障するために、すべての自動車、自動二輪車が必ずかけているもので、他の保険と違って、被害者から直接保険会社に請求できることになっています。この被害者請求について加害者の同意を得たり、通知したりする必要はありません。
調停は、金額の多少にかかわらず、簡易裁判所で、訴訟の場合のような厳格な手続きによる証拠調べなどをせずに、簡易な方法で調停委員が立ち会って話合いによって解決する手続きです。申立ても本人が、裁判所に備えつけてある用紙に記入すればよいようになっています。
しかし、相手の住所地にある簡易裁判所に申立てをしなければならないので、相手が遠い土地にいるときは不便なことになります。
訴訟は、当事者の厳格な主張、立証によって、裁判官が事実認定をし、損害賠償責任の有無、被害者側の過失の有無程度、賠償すべき金額などについて法律的判断を下すという手続きです。
訴訟では、刑事記録などを取り寄せたり、証人尋問をしたり、専門家に鑑定させるなどして事実を明確にしていくので、時間と手数がかかることはある程度やむを得ないことです。
しかし、訴訟といっても必ず判決までいかなくてはならないわけではなく、ある程度事実関係が明確になったときに、裁判官が仲に立って話合いによる解決をする手続き(和解)に移してもらうことができます。東京地方裁判所では、全休の六割くらいが、この和解で解決されています。
和解が成立すると、その条件をはっきり書いた和解調書が作られ、相手が守らないときはすぐ強制執行ができます。
さらに、判決の場合と違って、資力のある関係者に利害関係人として参加してもらって、連帯保証人になってもらうことができることや、訴訟上告などができず、割合に短期間で結論が確定することなどの便利なことがあります。
訴訟をするには訴状に印紙を貼って提出し、証人の旅費日当や鑑定跡を払わねばなりません。さらに、弁護士に委任するときには、着手金や報酬を払わなければなりません。東京の弁護士合では交通事故の場合、弁護士の知り合いのない人に弁護士を紹介していますが、このときの着手金は請求額の五分、報酬は成功額の一割と定められています。この弁護土会の紹介でない場合はもう少し高くなるかもしれません。
ただし、交通事故の損害賠償請求訴訟では、被害者が弁護士に支払う着手金、報酬の一部を損害として加害者に支払いを命ずる判決をしてくれます。和解で解決するときは被害者側がこの部分を譲歩するのが普通です。
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