被害者が直接請求できないとき
家族三人で箱根ヘドライブに行った帰り、対向車に正面衝突されて、主人と娘が六か月の重傷を負い、入院中です。
対向車の運転手は飲酒の上での運転で、当方にはまったく過失はなく、先方が一方的に悪いのに、私の方からした損害の請求に対し、まったく誠意がみられず困っています。主人は入院中で交渉に当たれず、娘は三歳でどうしたらよいかわかりません。このような場合どうやって解決したらよいのでしょうか。
交通事故の被害者が幼児の場合、または重傷の場合には、当然、直接に加害者と損害の請求その他の交渉はできないことになります。
一方入院費用や治療費あるいは生活費はそんなことと無関係に必要になるわけで、加害者に誠意があって積極的に解決に乗り出してきている場合であれば、損害の内金というような形式で仮払いをしてもらい、ご主人の回復をまって、ご主人に直接請求や交渉をしてもらうこともできますが、加害者が非協力的である場合だと、被害者としては、はなはだ困った状態におかれることとなります。
そこで、当事者である被害者に代わって、この交渉をしてもらう人を考えることになります。
いわゆる代理人をたてることになりますが、代理人の資格というものについては、法律上とくに規制はありません。ただしこのことは、だれでもよいということと同意義でないことをご注意ください。
いわゆる示談屋というもの、ないしはこれに準ずる者に代理人になってもらうことの不適当なことは申し上げるまでもないと思います。
また、弁護士法七二条には「弁護士でない者は、報酬を得る目的で、訴訟事件、その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁もしくは和解その他の法律事務を扱い、またはこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と規定していて、この違反者に対して罰則をもって臨んでいます。事件屋、示談屋の不法なことがおわかりと思います。
結局、身内の方とかあるいは友人知人になってきますが、事務的な事項の処理能力があり、交通事故にもとづく損害賠償請求に関する法律的な知識があり、かつ運転についても交通法規についても相当程度の知識を有し、なおその上に信頼できる人という要請を満足させられる方が、はたして身の回りに何人いるかというと意外と数は少なくなってしまいます。
そこで結論からいうと弁護士に委任して法律上のあらゆる手段を考慮して接渉してもらうことが、最も安全かつ早道ということになってしまいます。必ずしも訴訟だけを目的として弁護士を選任する必要はないということです。
代理人をたてる場合は、委任事項(何を委任するのか)をはっきりときめて委任しないと、不測の損害をうけることがありますから、ご注意ください。また、委任を解除する(解任はいつでもできます)ときは、相手に解任することを通知しなければなりません。配達証明付の内容証明郵便ですれば間違いは起きないでしょう。
つぎに、本問の場合、代理人を選任するのはだれかの問題がありますが、ご主人の損害賠償の請求に関しては、ご主人が代理人に委任する人(委任者)になることは当然です。娘さんについては幼児であり当然未成年者であるわけですから、代理人の選任や委任は嬢さんにはできません。
この場合は親権者である父と母がすることになります。なぜなら、未成年者については、親権者が法定代理人になり親権者が父と母の場合は共同で親権を行使することになるからです。
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