示談屋が賠償金を渡してくれないとき
私は、先日帰宅の途中、運送会社のトラックにはねられ、全治三ヵ月の傷を負いました。相手の会社は、できるだけのことはすると誠意をみせてくれ、病院の治療費も
きちんと払ってくれました。その後、損害賠償の請求をしようとしているところに、その会社と懇意にしているというAが出てきて、交渉は一切してやるというので、まかせたところ、いつになってもらちがおかず、相手の会社に電話をすると、すでに支払っているとのことですが、どうしたらよいのでしょうか。
この場合まず、その示談屋に対し刑事告訴を利用して、示談屋からとにかく金をはき出させることが第一です。
もっとも、いきなり示談屋が逮捕されてしまったのではその間、金をはき出させることもむずかしいでしょうから、もし強く請求すれば返してくれるみこみが、多少でもありそうだというときには「告訴するぞ」ということでおどかしながら、とにかく金の支払いを請求してみる、ということも必要でしょう。
それから、もし、あなたが不幸にして示談屋に委任状でもとられている場合は、一刻も早く「委任契約を解除する」という内容証明郵便を、示談屋に出しておくことです。
そうでないと、後で「自分はあなたか
ら委任をうけた代理人なのだから、報酬をもらうのは当り前だ」と居直られることもあるでしょう。委任契約というのは、ふつういつでも解除することができるようになっています。
また、それでもだめなら、各警察署に、いわゆる家事相談所というのがありますから、最寄りの警察署の家事相談所に行って、示談屋を警察から呼び出してもらうのも、一つの手でしょう。
というのは、示談屋は自分が法に違反して犯罪を犯しているということを、自分で十分に知っていますから、あわてて飛んでくるかもしれません。
またもう一つの方法として、示談屋の住所の最寄りの簡易裁判所の民事係に民事調停の申立てをしてみるのもいいでしょう。
それをやれば、あとは裁判所の調停委員の先生方が、示談屋にいろいろと説得、勧告をしてくれます。
あるいは、日本中どこでも都道府県庁のあるところには、弁護士会がありますが、そこの中の、交遣事故処理委員会というところに駆け込んでみる手もあります。これはもちろん、専門の弁護士が奉仕的に相談に乗ってくれるところで、場合によっては、その示談屋に対する刑事告訴まで世話をしてくれるかもしれません。
それでもだめなら、民事的には不当利得返還請求ということで、示談屋が加害者から受けとった金の引渡しを訴訟で求めることもできますから、裁判を起こしてそれでやるのも一つの方法でしょう。その訴訟を進めるうちに示談屋が自発的に金を返してくれるならばうまいものです。
ただ、そうでない場合は、判決までもらっても、ふつう示談屋などにはまとまった資産のない人が場合が多いでしょうから、差押えをすることもできず、また、金額も少ない場合が多いでしょうから、そこまでいったのではあまり実効がないかもしれません。
いずれにしろ、示談屋の介入した解決では、一般にその弁償金も正当な額より少ない場合が多いでしょうから、一刻も早く専門の弁護士に相談して、正当な金額の不足分を、あらためて加害者に対し正式に請求すべきです。
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