交通事故の解決方法を選ぶべきポイント

一般的には、加害者が傷害事故のときに病院に見舞いをかねて訪れてきて交渉が始まる場合、あるいは死亡事故の場合には、おくやみにきて、その後に交渉が開始されるという場合が多いでしょう。
 加害者の場合には、交通事故を起こせば刑事処分かひかえていますので、できるだけ早く示談をしておきたいというのが一般的なようです。
 とにかく、傷が治ったり、事故の後始末が終わったときに、加害者に対して書面で「何日にどこで会いたい」旨を連絡することです。加害者に誠意があれば、これに必ず答えてくるはずです。
 会えた場合には、交渉の窓ロは誰にするか、保険の請求はどちらでするか、交渉の日程などを決めることです。
 その後に、具体的な損害賠償額についての交渉をすることになります。
 もし、何の連絡もなく、電話等で催促しても応じない場合は、専門家に顛んで、訴訟で解決するしかないでしょう。つぎに、どのような場合に示談にすべきか、あるいは訴訟に踏み切った方がよいのか、そのポイントを事項別に掲げてみましたので参考にしてください。

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商店、農業、画家などの場合、その収入金額を判定することはなかなか困難です。保険関係では納税証明とか確定申告書などにはっきり出ている金額だけしか認めません。しかし、裁判では、商売に関するメモ、映面や関係者の証言などによって、経営の規模、生活の状況などの事実を証明し、できるだけ実際に近い金額を損害額として認めてもらうことができます。
 また、後遺障害が残ったときの将来の収入滅少額の算定については、保険関係では後遺障害の程度に応ずる労働能力喪失率によって計算するようですが、裁判では、実際の症状、被害者の従来の職業、将来の再就職の見込みなどについて事実を述べて、できるかぎり実際の状況に近い金額を裁判官が判断して算定することになります。
 このように、裁判に持ち込めば保険よりは多額の損害額を認めてもらうことができ、判決が出れば任意保険もその金鎖を払っているようです。
 しかし、この自家営業者等の収入金額についての裁判は、多くの証人について証人尋問をやらなければならないので、短かくても一年はかかると思われます。
 ですから、収入減少による損害の証明か簡単な証明書でできるサラリーマンの場合は、示談交渉を気ながにやって、示談で解決する方がよいとも考えられますが、この証明が容易にできない自家営業者などの場合は、ある程度示談交渉をやって、双方の意見が大きくくい違うときは、早めに訴訟に持ち込んで、十分に証明活動をやり、裁判官の判断を持つようにすべきです。
 事故を起こした運転者、その雇い主である会社にめぼしい財産がないことがあります。しかし、こういうときでも、その会社の社長個人は土地建物などの財産を持っていることがあり、中小企業で社長が直接運転者を指揮監督しているような場合は、この社長個人も賠償責任があるのです。
 また、下請会社の車の起こした事故について、その下請を使っている元請会社にも責任が認められる場合もあるのです。
 直接の当事者に資力がないときは、このような間接的な責任者を探さねばなりません。これには弁護士会や都道府県等の交通事故相談所を活用してください。
 一部の裁判所では、直接の責任者と、その責任者が掛けていた任意保険の保険会社とを一つの訴訟で訴えた場合、任意保険の会社に対して、直接被害者に保険金を払えという判決を出します。
 加害自動車について任意保険が掛けてあるときは、加害運転者やその雇い主、あるいはその車の持ち主などに資産がなくても、それら責任者と任意保険の会社とを同じ訴訟で訴えて、保険会社から直接に保険金を取ることを考えるべきです。
 運転者、車の所有者が未成年のとき、直接親に対して賠償を請求することはできません。未成年でも物事の是非善悪がわかる程度の年齢に達しているときは、その者の過失による責任は、その本人に対してしか認められないことになっているからです。
 こういうときは、親を実質的な「運行供用者」として訴訟を起こすか、いちおう未成年者だけを相手に訴訟を起こし、和解という手続きで親を参加させて連帯保証をさせるとかいう方法をとることを考えねばなりません。
 こういうときは、訴訟を起こした上で、和解という手続きに移してもらって、そこで裁判官に仲立ちをしてもらって、気ながに話し合う必要があるので、早めに訟訴手続きをとるのが上手なやり方だと思われます。
 強制保険から金を取ったり、健康保険などを活用すると、直接加害者に請求できる金額が少なくなることもあります。こういうときは、弁護士会や都道府県等の無料相談所でよく相談して、調停を申し立てるか、司法書士に訴状を書いてもらって訴訟を起こし、裁判官に仲に入ってもらって和解という手続きで解決するようにすれば、むずかしい立証活動はやらないですますことができます。
 負傷事故の損害賠償について示談するときに、しばしば問題になるのが、後遺症の保障です。とくに最近多くなっている追突事故によるむち打ち症は、相当期間を経過してから思わぬ障害が起きてくることがあります。これを防ぐのが、前に述べた治療を第一にしなければならないということなのです。
 ただ、被害者とするといちおう治療が終わったとはいえ、また、いつか変になるのではないかという心配から逃れられず、示談条件の一項目に、「後に後遺障害が出たときはこれについて損害賠償をする」旨を記入するように要求し、加害者側は反対に「今後本件事故に関しては一切の請求をしない」旨の一項を要求して、このことだけで示談が成立しないこともあります。
 しかし、たとえ「今後も保障する」と書いてあっても、後日実際に金を払ってくれなければ改めて訴訟を起こさねばならないのですし、反対に「今後一切請求しない」と書いてあっても、示談成立当時予想されなかった障害で、事故によるものであることがはっきりしている障害が出たときは、訴訟を起こせば、裁判所は賠償を命ずる判決をしてくれますから、双方ともこの点にこだわらず、病状を確認し合って示談を成立させるべきなのです。
 被害者側にも過失があるとき、たとえば歩行者の飛び出し、運転者の除行義務違反、交差点での左方優先無視、直進車優先無視などがあるときには、過失相殺といって、被害者側の過失の割合に応じて賠償請求できる金額を減額されることがあります。
 この過失相殺の割合について、裁判所ではいちおうの大まかな基準を設けて処理していますから、各地の弁護士会の相談所で、具体的な事故について、どのくらい過失相殺するのが妥当かをよく聞いてください。
 過失相殺が問題になる場合は、双方の当事者の考え方が一致しにくいので、示談解決は困難ですから、早めに訴訟に持ち込んで、裁判官に判断してもらうのが上手なやり方です。
 損害賠償の請求権は三年で時効により消滅します。この三年という期間は、「損害および加害者を知った時から」かぞえられます。負傷事故の場合、治療に気を取られていると、三年間加害者と何の連絡もなく過ごしてしまうこともありますので注意が必要です。
 ただ、加害者が最後に治療費を支払ったときや示談交渉をやった最後のとき、医師が後遺障害が残ると判定したときから三年以内なら時効にはかかりません。
 しかし、加害者に対して内容証明郵便などで請求しても、それだけで完全に時効を中断させることはできません。加害者側が自から損害賠償義務のあることを認めているとみられる行為、つまり治寮費の支払い、示談交渉などがなければ時効は中断しません。
 被害者としては事故から三年以内に訴訟手続きをとるつもりで処理するのが安全です。
 なお、強制保険の請求は二年間で時効にかかりますから、この点にも注意してください。

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