加害者が示談の交渉に応じないときは
私は車で出勤する途中、交差点で停車したところ、運送会社のトラックに追突され骨折し、ニカ月同会社を休みました。示談の交渉をしようと思うのですが、運転手は
二三歳の男で、電話をしても居留守を使い手紙を出しても返事をくれません。交渉の日を約束してもきてくれません。雇い主は運転手の持ち込みの車だから責任がないといって、示談に応じません。どうしたらよいでしょうか。
自動車事故を起こした加害者の中には、逃げまわっていて、さっぱり示談の交渉に応じない人がいます。
そんなときは、内容証明郵便で損害賠償の請求をすることです。たとえば、その中に損害賠償として金何万円を請求します。本書面到達後一〇日以内に何等のご返答なき場合は、法律的手段に訴えますので、右念のため、と書き添えます。
内容証明郵便というのは、どんな内容の手紙を、いつ相手方に出したか、ということを郵便局で証明してくれる郵便です。
内容証明による請求は、これを受け取る側から見ますと、当事者間の円満なる関係を断絶する一種の最後通牒、またはおごそかな宣戦の布告という印象を受け、その文書を書いた受取人に不思議な威圧感を与えるものです。
内容証明郵便を受け取って以来、その案件が解決するまで不眠症になったという人の話はよく聞きます。
内容証明郵便は、同文の内容を三通書きます。用紙は、赤線で原稿用紙のようにできている内容証明の用紙が市販されておりますので、これに複写紙を使って書くと便利です。手紙は一行ニ〇字以内、一枚二六行以内に書かなければなりません。
同文の手紙を三通書いて、郵便局に特って行きます。郵便局では一通を相手に送り、一通を郵便局に保存し、一通をこちらに返してくれます。
なお、内容証明郵便を出すときは、必ず配達証明付にしてください。後日、郵便局から、いつ相手方に配達されたかの通知がきます。
内容証明郵便を出しても、示談に応じないときは、訴訟か調停を起こします。
加害者側が任意保険に加入していたり、または資産がある場合には、さっさと訴訟を起こした方がよいでしょう。
最近、交通事故の訴訟は、審理のスピードアップがはかられ、かなり早く事件がかたづくようになっています。そして、相手方に財産がある以上、賠償金を取りはぐれる心配はありません。
また訴訟を起こしたからといって、必ず判決まで進まなければならないというわけではありません。裁判上の和解といって訴訟中に示談することが非常に多いのです。裁判所がなかに入りますので、示談が成立しやすくなります。
訴訟を起こすには法律の知識と法廷技術がものをいいます。この場合には、弁護士を頼んだ方が安全です。
損害額の大きくない場合や、加害者側に資産がない場合には、訴訟を起こす前に調停を利用するとよいでしょう。
調停というのは、裁判所において、調停委員になかに入ってもらい、被害者と加害者とが話し合って事件を解決する制度です。話がまとまると、判決と同じ効力を持つ調停調書が作成され、相手が約束に反した場合には、差押えなどの強制執行ができます。
調停の場合は、訴訟と違って、法律論をふりかざして戦うというよりも、道理を尽くしての話合いという要素が多いので、弁護士を頼まずに、本人で行なうこともできます。
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