示談交渉が進展しないときはどうするか

私は運送会社のトラックにはねられ、全治三ヵ月の重傷を負いました。はじめのうちは、加害者とその雇い主が病院に見舞いにもきましたが、示談交渉にはいってからは、いっこうに誠意をみせず、進展しません。どうしたらよいでしょうか。

 示談が難航する場合は、いろいろあると思います。それは加害者のほうで自分は責任がないと信じ込んでいるとき、責任かあることは認めていても示談金を安く値切ろうとするとき、人間的にかたくなで話がわからないとき、本当に金がないときなどの原因によるわけです。
 責任があるかどうかは法律判断の問題ですが、客観的にみて「相手が悪い」あるいは「相手も悪い」と常識でいえる場合は相手に責任があることは間違いありません。「自分も悪かった」と思う場合には、責任の量、いいかえれば損害額が、法律的にいうと減額される運命にあるというだけです。

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そこでそれを前提として被害者として穏当な請求をしているのに相手が応じない場合はどうしたらよいかということですが、まず最初に考えなければならないのは、相手に財産があるかどうかということです。この場合の財産は相手方自身の財産です。相手方の身内には財産があるが、当人にはないなどということもあります。
 そして相手に財産がある以上、ちゅうちょせず裁判をすべきです。裁判をすると時聞かかかるとよくいわれますが、東京などでは交通専門部ができていてかなり迅速な処理をしています。そして相手に財産がある以上、後日損害賠償金を取りはぐれる心配はありません。もっとも裁判が終わるまで相手が財産を穏匿しないような方法をとっておくことは必要です。そしてこういう裁判手続きに及ぶと、意外にその途中で示談ができる場合が多いものです。
 相手もこれまで「自分は悪くない」と思っていたのか、証人の証言を聞いて「やっぱり自分も悪かった」と気づくこともありますし、かたくなな人も、「裁判所ではそん なことは通用しない」ということを察し、悟ることもあるわけですし、安く値切ろうと思っていた示談金もこちらの証拠をみて意外と損害が多く「こんな全額では安過 ぎる」と悟ることもあるわけです。
 これに反して、相手に財産がない場合の処置は困難です。裁判所の判決をもらっても絵の中の餅になってしまうからです。
 この場合は、根気よく示談を進め、とにかく相手に一時金を作らせて、金額に不満があっても手を打ってしまうことも考えなければなりません。
 それすら不可能なときは、裁判よりも調停を申し立てるほうがよいと思います。調停は話合いの場ですから、調停委員からものの道理を説明してもらうことができますし、とくに親なり身内に財産があるというときには、そういう人を簡単に呼んで協力するよう説得することもできるわけです。そして話がまとまると、判決と同じような効力を持つ調停調書ができあがりますから、きわめて安心できるわけです。
 一般的にいわれていることは、交通事故の調停は比較的まとまりやすく、また話がつくとその履行を怠る人はきわめて少ないということです。
 これは、判決の場合は、「いやだ、いやだ」といっている加害者に対し裁判所が強制的に判決で命令するのに対し、調停の場合には加害者も納得したうえで成立するためでもあり、また交通禍の悲惨さをみんなが知っているということの反映でもあるからです。

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