示談屋や事故屋に騙されないコツ
交通事故の示談には、示談屋には頼まないことです。こちらから頼むことをしないのはもちろん、見知らぬ人が頼みもしないのに勝手にやってきて「お宅に有利に解決してあげます」と、甘いことばをかけてきても、きっぱりと断わることです。あまりしつこくくるときは、「弁護士法違反の罪で告訴しますよ」と反論するのも一つの手でしょう。弁護士法七二条および七七条には「弁護士でない者か報酬を得る目的で訴訟事件その他一般の法律事務に関して、相談、代理もしくは和解その他の法律事務を取り扱うことを業としたときは、二年以下の懲役または五万円以下の罰金に処する」と書いてあり、示談屋はこれに該当するのです。
スポンサーリンクましてや、示談屋の持ってきた書類にうっかりとはんこを押してしまうなどは、もってのほかです。その書類は、たいてい示談書の場合が多いでしょうが、被害者がハンコをおしてしまったら、あとは金がとれないものと思わなければなりません。つぎのようなケースがありました。
示談屋から「これは弁償金や慰謝料を請求するのに必要な書類だから、ハンコを押してください」といわれて、よく読みもしないで、うっかりとハンコを押したところが、あとでそれを弁護士に読んでもらったら大変な内容で、法律的には反対に弁償金や慰謝料をとらない意味になる書類であることがわかりました。
また、最愛の幼児をひき殺されて、呆然となっているすきにつけこまれ、示談というのかどういう意味を持つのかもわからぬままに、示談屋のもってきた示談書類に、ついうっかりハンコを押してしまったために、ほんのわずかな金しかとれなかったというのもありました。
示談とは、ふつう損害賠償請求権、つまり、治療費や死んだ場合の本人の一生分の月給や慰謝料を請求する権利を放棄し、また加害者を処罰することを望まないという意味のものです。
大事なことは、とにかくまず当事者同士
でよく話し合うことです。それでまとまらなかったらなるべく早く知合いの弁護士に相談することです。弁護士に頼むと、金がかかると思われるかもしれません。しかし、とくに被害者の場合などは、けがをさせられたり、あるいは肉親の者が殺されたうえに、示談屋にまで金をまき上げられ、あげくのはては正当な手続きをふめばとれたと思われる金の何分の一、何十分の一くらいの金で泣き寝入りさせられることに比べれば、はるかに安い費用ですかということがいえるでしょう。
それは加害者にもいえることで、たとえば被害者にも相当のミスがあった場合、加害者としても相当のいい分があるにかかわらず、そのへんを示談屋のためにウヤムヤにされ、本来支払うべき額以上のものをとられてしまっては、これまた困ります。
もっとも、示談屋は、四、五年前から警察や検察庁や弁護士会などの取締りがきびしくなったため、最近はややその数も少なくなってきているようです。
また各タクシー会社や運送会社に事故係という人がいます。これらの人は、もちろん職業的な示談屋や事件屋というわけではありませんが、そうかといって、もちろん試験に合格して資格をとった弁護士とはちがい、そのやり口には、おうおうにして、ここにのべたようなことをやりかねないことが、たまにあるようです。
ですから、そうした人と、応対するときも、やはり、限光紙背に徹するくらいの注意が肝心です。
近年では、交通事故に関する損害賠償請求も、年を追うに従って、大きな金額になってきています。このような一瞬のスキが、正当にとれる賠償金さえをも、とれなくしてしまうのです。その点くれぐれも用心してください。
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