示談のときに確実に賠償金を取る方法
私は、交通事故の被害者ですが、加害者Aとの話合もほぼまとまり、近く示談をしたいのでが、AはB会社のセールスマンで資産は、ほとんどありません。AはB会社所有の自動車を運転中に事故を起こしたもので、しかも示談交渉には始めからAの友人のCがあたっており、私はAと直接話合ったことはありません。どのような点に注意して示談すればよいでしょうか。
賠償額の全額について支払いを受け、それと交換に示談書をとりかわす場合には問題はありませんが、分割払いのときには、被害者側としては、相手方に示談の内容を確実に履行させる方法をとらなければなりません。
この場合、最も重要なことは、支払能力のある者を相手方として示談をすることです。本問の場合、Aには資産がないようですから、B会社をも示談の相手方とすることが必要です。なるほど事故を起こしたのはAですが、AはB会社のセールスマンであるうえ、自動車もB会社の所有ということですから、B会社は原則として損害賠償義務者に該当すると思われるからです。
また、B会社の経営状態もよくない時は、資産のある人を連帯保証人とするか、抵当権を設定するように交渉すべきです。連帯保証人をつけておけば、Aの不履行の場合に、連帯保証人に全額の支払いを請求できます。
さらに、不払いの際には直ちに強制執行ができるようにしておくことが必要です。そのためには公正証書を作成する方法、即決和解、調停などがあります。
公正証書を作成するには、当事者双方が公証役場へ出頭して、公証人の前で示談内容を確認し、公証人が公正証書を作成します。費用もそれほどかからず当事者が多忙の場合には代理人が出頭することによっても作成することができます。
即決和解とは、当事者双方が簡易裁判所に出頭して裁判官の前でする和解です。この場合、あなたは、原則としてAあるいはB会社の所在地を管轄する簡易裁判所に和
解の申立てをしなければなりません。これは口頭または書面でしますが、それには請求の趣旨(一定額の金銭を支払えということ)および請求の原因(日時、場所などにより交通事故を特定し、それにより一定額の損害を受けたということ)並びに紛争の実情(示談の経過)を記載しなければなりません。そうすると裁判所から期日を定めて呼出状がきます。その期日に出頭すればよいのです。
調停も、即決和解と同じく、簡易裁判所で調停委員会の前で話合いをするもので、手続きも即決和解とほぼ同じです。
なお、示談内容が分割弁済になる場合には、過怠約款を入れるようにしなければなりません。すなわち、月賦の支払いを怠った場合には、残額を一時に支払わなければならないようにしておくことです。その内容は「月賦金の支払いを一回でも怠ったときには、何らの催告をしなくとも直ちに期限の利益を失い、残額を一時に支払うものとする」というようなものです。
あなたの場合、Aの友人Cが示談交渉にあたっているようですが、代理人による示談の場合には、Cに、はたして代理権があるのか、示談内容についてAが承諾しているのかを確認する必要があります。CがAの印鑑証明書とか実印を持っていたとしても安心できません。ぜひ、Aに直接確認するようにしましょう。
最後に重要なことは、示談内容を弁護士などの専門家に確認してもらうことです。示談は一度すると、めったにやりなおしのきかないものです。ましてや、即決和解とか調停を経ておりますと、そのやりなおしはほとんど不可能です。また、医者に精密検査をしてもらっておくことも必要です。
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