販売会社に車の所有権がある場合の責任

私は信号に従って横断中、せっかちな運転をしてきた自動車が、信号の変わることを予測して発進したため横断中の私を引っかけて、私は一カ月の傷を負わされてしま いました。調べたところ、運転手は無資力でとても支払ってもらえそうにありません。自動車は月賦を支払中とのことで自動車の既売会社の所有とのこと。こんなときには、所有権を留保している自動車会社にも損害賠償を請求することができないものでしょうか。

 交通事故があった場合に、自動車の所有名義人に対して損害賠償請求ができないかという問題は非常に興味のある問題です。いったい自動車の所有権者であるということと、事故とはどのような関係があるのかということです。

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自動車を持つ場合には、種々の形態があります。単独で持つ場合、共有の場合、借りている場合、割賦払いで代金を支払中のとき、などです。民法および自賠法は、所有者の面と占有者または保有者の面から規定をおいています。特に自賠法は保有者という新しい言葉を設定して、事故による責 任の有無を区別しています。したがって、保有者という言葉の中には、所有者である保有者と、そうでない保有者とがあり得るのです。
 本問の場合は、所有名義人の中でも、特に月賦代金を回収中の自動車の販売会社に対して責任追求できないものかという一般的な問題ですが、結論からいうと否定せざるをえません。また最高裁判所でも同じような判決を言い渡しています。
 判決はその理由としてつぎのようなことをあげています。すなわち「所有権留保約款付売買の売主が代金の割賦金を受領することは当代のことであって、これをもってその自動車から運行の利益を受けていたということはできない」といって、販売会社に所有権が留保され、残金受領を継続するからといって賠償責任とは直結しない旨を宣言しました。
 これは、所有者といっても単に名義のみで、実質上、自動車をその本来の用法に使用する立場にないからということにつきるのです。従来の考え方ですと、所有者に責任を認める場合は、どの場合でもその名義人だということで処理すればよかったので すが、交通事情の現状を考慮して、保有者という新たなる言葉によって、これを基準に責任の有無を区別しているのです。所有権を留保するのは、自動車による利益を得るためではなく、商品としての自動車の代金を完全に回収する便宜上、考えられた取扱いですので、自動車月賦販売の実情にも合致した考え方だからです。 

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