交通事故の被害者はどのような請求ができるか

交通事故の被害者としては、加害運転者を警察や検察庁に告訴することができます。
 もっとも、加害運転者の刑事責任については、普通の場合、警察が積極的に捜査、送検し、検察官が起訴して裁判にかけますので、被害者側から告訴の手続きをする必要はまずありません。ただ、警察が加害運転者に過失はないとして送検しないようなときには、被害者側から警察あるいは検察庁へ告訴状を提出して告訴の手続きをとり、それでも不起訴処分になったときは、各地の地方裁判所にある検察審査会に審査の申立てをして、さらにもう一度調べなおしてもらうことができます。

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被害者としては、夫が亡くなった、子供に障害が残ったとかというような現実があるわけですから、何とかして加害運転手を国の力を借りて懲らしめたい、という気持ちが起こるのは当然のことと思います。
 しかし、刑事事件はあくまでも、警察や検察庁が扱うもので、被害者の方で、厳重な処罰をしてくれ、という要求を出したとしてもとりあってくれないでしょう。それでは、被害者が刑事事件に対しては、何らかかわることができないかというと、そうでもありません。その一つは嘆願書を出して刑を軽くしてほしいということ、他の一つは示談です。示談ができているか否かは、起訴にするか、刑の重さを決める上で、大きな意味をもちます。
 このように、刑を軽くするという方向でしか、刑事事件に対して、被害者は動けないのです。だから、このことを一つの武器として、つぎに述べる民事責任を有利に導くようにするしかありません。
 これは刑罰でなく、いわゆる行政処分といわれるもので、公安委員会がこれを行なっています。
 具体的には、免許の停止や免許の取消しなどがその内容です。最近は、道路交通法改正のつど、厳格になってきており、酒酔い運転で人をはねた場合などは、文句なく免許を取り消されます。
 これに対しては、被害者からどうしてくれとか、こうしてくれという請求ができるものではありません。
 民事責任というのは、損害賠償責任のことです。これは被害者から加害者に積極的に請求しなければなりません。警察はもちろん、裁判所も被害者が黙っているのに、被害者のために損害賠償の手続きをとってくれることはありません。自分で直接交渉するかあるいは、弁護士とか知人とかの代理人を頼んで交渉してもらわなければなりません。
 ここでいう損害には、いろいろなものがあります。大別すると、積極損害、得べかりし利益の喪失(逸失利益)および慰謝料の三種でしょう。
 積極損害というのは、治療費、入院費、葬儀費などのような、被害者が現実に支出したもの、あるいは将来確実に支出しなければならない費用のたぐいです。
 得べかりし利益の喪失とは、被害者が生きていれば、あるいは事故のために受傷し労働能力を失わなければ、どれだけ利益をあげていくことができたかというもので、いわゆる将来受けとるはずの利益のことです。
 慰謝料とは、事故が起こったために生じた精神的な苦痛に対する損害賠償のことをいいます。
 この損害賠償の問題を解決することを、一般的には、交通事故の解決といっている場合が多いようです。

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