自転車に三人で乗っていた場合の過失割合

小学六年生の男児が、学友と共に自転車に三人乗りをしていたところ、タクシーに追突され一人の子は大ケガをしました。その父親がタクシー会社に治療費などの損害を請求したところ、タクシー会社から自転車に三人乗りしていた子供にも過失があるからといって、半分しか払わないといってきたそうです。この場合はどうなるのでしょうか。

 自転車に三人乗りをするということは、道路交通法違反で許されていることではありません。しかし、だからといって道路の左端を走っていたのに、自動車の運転手が脇見をして追突した場合など、事故原因そのものに三人乗りの違法性は結びつかないものと思われますので、過失相殺で減額することは間違いでしょう。
 しかし、三人乗りをしていたために走行が安定せず、フラついたり、倒れかかったりしてタクシーと接触したというような場合には、過失相殺が適用され減額されてもやむを得ないかもしれません。

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本問では接触の状況が不明ですので、はっきりしたことは申しあげられませんが、フラついていたことが、ジグザグ運転をしていたとかいうようなことがあれば、タクシー会社の言い分もある程度認めなければならないかもわかりません。
 そのような事情がなくて、タクシーの一方的過失とみられるかぎり、定員オーバーの乗車とか、指定された場所以外での乗車とかいうだけでは、慰謝料の減額理由として斟酌されるかもしれませんが、過失相殺の対象として考えるのは無理ではないでしょう。
 定員五名のところ七名の大学生を乗車させていた自家用車に追突し、七名がムチウチ症になった事例で、「定員オーバーの違反は追突事故の原因には直接影響をしないので過失相殺にはならないが、ただ定員を厳守すれば加害者の支払う損害額がそれだけ少なくなったかもしれないことを考慮すると、ある程度慰謝料は減額する必要がある」としたものも見られます。
 ところが、めずらしく定員オーバーを理由に過失相殺を適用した判例があります。
 それは、原付自転車に三人乗りをして二パーセントの過失相殺を連用したのです。
 これは、原付自転車の後部の荷台に横向きに母親を乗せ、前の方に座布団をおいて娘を同乗させて運転していたところ、九〇キロメートルの速度で反対方向から進行して来た自動車が、その原付を認め急ブレーキをかけたところ、スリップして対向車線に入り、その原付自転車と接触して、二人死亡、一人傷害を受けた事例で、裁判官は、「第二種原動機付自転車の後部荷台に乗車したというだけで被害者の過失ということはできないけれども、いわゆる横乗りや乗車設備の無いところに乗車させ、結局三人も乗車していたということは、被害者らの損害を大きくした一因であることは否定できないので、損害額(慰謝料を除く)から二〇パーセントを減額するのが相当である」と判示しました。
 本問の場合、慰謝料額の減額だけで納得してもらうか、過失相殺で減額するか、大変難しい問題がからんでいますので、タクシー会社とよく話し合ってみる必要があるでしょう。
 もし、納得できる金額が提示されなければ、訴訟で裁判所の判断に委ねることも考えた方がよいかもわかりません。

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