後遺症の危険があるときの被害者の心得
私は、国道で小型トラックにはねられ、現在入院しています。傷はたいしたことはないと思っていたら、脳波検査の結果、後遺症の心配があるといわれました。私が損害賠償を請求する際の心得など教えてください。
まず交通事故の後遺症とは一体どのような症状をいうのでしょうか。一口にいえば傷害が治癒したにもかかわらず、なお身体に障害が残った状態のことです。
このような症状の危険を感じたら被害者は、どのようなことに注意して、加害者に対処すべきでしょうか。
示談になったとき、、誰を相手にしたらいいのか、示談書の形式はどうかなどの一般的なものを除いて特に注意すべき点のみをあげます。とにかく、あわてずに身体的障害について専門医の精密検査を受けることが先決です。なぜならば、後遺障害の有無は被害者が加害者(運転者および車両運行供用者の双方を合む、以下同じ)に対し請求できる損害賠償の範囲および額について法律的に差があるからです。医師の診断の結果、仮りに、後遺症のおそれなしとされたとしても示談の内容として万一の場合に備え、将来もし該事故による後遺症が生じた場合のことを話し合い、このような場合の取決めをすることです。危険の度合が非常に少ない場合には、加害者側の責任負担の期間を二年とか三年、場合によっては一年間と限定することによって加害者が難色を示さず示談の成立がスムーズになるでしょう。
つぎに後遺症の危険があるときというのは、だいたい治療が長びく可能性の多い場合ですから、思わぬ損害がかさむと考えねばなりません。しかし、加害者側の支払能力が後々まで大丈夫とはいいきれず将来のことだけに不安です。せっかくこのような立派な取決めをした以上、これが生かされるように、たとえば、加害者側と連帯して賠償の責任を負担してくれる保証人を立ててくれるよう交渉することです。
たとえば運転者が未成年者である場合はその父親なり兄姉に、また相手が運転者と会社(運行供用者)であるときは会社の代表者個人ないし会社の重役など(法律上これらの地位にある者に責任の認められる場合もある)に加わってもらって相手方などの責任を保証してもらえば安心です。
相手方の資力によっては示談金としてもらう金額を一部削除するなどの譲歩をしてでも、このような将来のことを配慮した解決の方が、後遺症のおそれある本問のばあいは賢明といえるかも知れません。
裁判になったとき、裁判所では日時をかけ十分審理されて補償金なり損害賠償の金額が決められますから前述べた心配はいりません。強いていうならば、既述の通り本問の場合は日時もかかり、また賠償請求額も上回る例が多いので、あらかじめ相手側の責任負担能力の調査などをし、財産保全の手続きをとっておくことです。判決の言渡確定後、いざ支払ってもらおうと意気込んでもその時相手方が無一文に等しければ、辛苦を重ねた訴訟手続きも実質的には徒労に終わります。このようなことのないよう相手方の財産に対し仮差押え手続きなどをしてもらうようおすすめします。
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