交差点で衝突したときの過失割合
私の従兄は、バイクを運転して道路の左端を走り、まっすぐに進もうと交差点にさしかかったところ、目前を同一方向に進んでいたトラックが急に左折してき、ただちに急ブレーキをかけたのですが間に合わずトラックの後車輪に突っこみ亡くなりましたた。私のおじ夫婦は自賠責保険から五〇〇万円を受け取りましたが、それだけでは損害が全てカバーされたとは思われないので、運送会社に請求したところ、運送会社の事故係がきて、従兄にも前をよく見なかった不注意があるから過失相殺をしなければならない、そうすると自賠責保険の五〇〇万円で十分まかなわれて、もう支払分はない、と言っています。はたして、この事故孫の言い分は正しいでしょうか。
この左折と後続車とが衝突した場合にはその過失割合を評価することは大変困難です。
道路交通法三四条によりますと「自動車が左折しようとする場合には、あらかじめ道路の左に寄ってその上除行しなければならない」ことになっています。また「左折するときは、ウィンカーを出して合図しなければならず、その合図は左折するところの三〇メートル手前」からということになっています。
左折車が以上のような義務を尽くし、後続車に対する安全を確認した上で左折した場合にもかかわらず、後続車に衝突された場合には、むしろ直進する後続車に全面的に過失があるといえるでしょう。
一方、左折軍が直進後続車の直前でいきなり左折した場合とか並進している状態にあったのにいきなり左折した場合には、反対に左折軍に全面的な過失かおるといえるでしょう。
それではいきなりという場合はどういうことかといいますと、裁判所では、左折車が交差点の手前三〇メートルより前に直進車を追い抜いた場合や、左折車が除行をはじめた時、後続車が追抜きをした場合にはいきなり左折したとはみてないのです。
本問の場合でも、トラックとバイクとの距離がどのくらいあるのか不明ですが、もしトラックが交差点から三〇メートルの距離の範間内でバイクを追い抜き、左折の合図をして左に寄って除行して、左後方の
安全を確認した上で左折し、従兄の方は前方をよく見なかったという過失がある場合に、その過失割合はトラックが五〇パーセント、バイクも五〇パーセントとなるのではないでしょうか。
もしトラックが交差点より三〇メートルより手前でバイクを追い抜いていた場合、追抜き地点より二〇メートル手前から左折の合図をしたのにかかわらず、従兄の方がそれを気ずかずに進行したために事故が起きたとすると、バイクの方の過失割合が六〇パーセントということになります。
もし従兄の方が前方をよく見ていたという事情がありますと、過失割合が反対にバイクが四〇パーセント、トラックが六〇パーセントということになります。
このように左折車と直進車の衝突の場合には、その三〇メートルという短い距離の間でどういう動作をしたか、しないかによりまして過失割合の程度が変わってきますので大変むずかしくなってくるのです。
ついでに右折車と直進車との関係を説明しておきましょう。
今まで右折車であった場合でも、すでにその車が右折を開始していれば、直進車に対して右折車の方が優先権かあるということになっていましたので、その過失割合は右折車三〇パーセント、直進車七〇パーセントといわれていました。
反対に右折車がまだ右折を開始していない場合には、右折車は直進軍の進行を妨げてはならないのでその際の衝突の過失割合は、反対に右折車七〇パーセント、直進車三〇パーセントという割合になっていたようです。
しかし、道路交通法の改正によって、すでに右折をしていた場合の右折優先の規定がなくなりました。そのため、すでに右折をはじめていたかいないかは、過失割合を決める上においてそう重要な要素ではなくなってきました。
ただ、過失割合をある程度修正する場合には影響してくることでしょう。
結局、直進車と右折車の過失割合は、直進車優先という規定が重視される関係もあって、常に直進軍が四〇パーセント、右折車が六〇パーセント程度の過失割合といえるのではないでしょうか。
交通事故の賠償金はどのような法律によって定められているか/ 運行供用者の交通事故の責任/ ケガの場合の損害賠償の算出/ 死亡事故、物損事故の場合の損害額の算出/ 死亡したときの損害賠償の請求額は/ 得べかりし利益の算定の仕方/ 弁護士費用はいつでも請求ができるか/ ケガの場合に請求できる損害の範囲/ 働けないほどケガをしたときの損害賠償は/ 後遺症の危険があるときの被害者の心得/ 後遺症の場合の損害賠償の時期/ 交通事故で財産上の損害を与えたときはどうなるか/ 店舗を壊された被害者の賠償請求は/ 歩行者が落とした時計をひいたら全額弁償を要求された/ 急ブレーキをかけて故障したときの賠償請求/ 犬が轢かれたときの賠償請求/ 車の修理費や代車料は賠償請求できるか/ 過失相殺とはどのようなことをいうのか/ 誰に対しても過失相殺は主張できるか/ 裁判所では過失相殺をどのように運用しているか/ 自動車保険でも過失相殺をされるか/ 被害者の息子の過失のために事故が起きたとき/ 入院中の態度が悪いために被害が拡大したとき/ 過失割合の認定基準/ 好意同乗者はどれほどの過失相殺をされるか/ 横断歩道上の事故でも過失相殺されるか/ 飛出し事故の過失割合はどのくらいか/ 追突事故では過失割合はどう認定されるか/ 交差点で衝突したときの過失割合/ 複数の車の事故による賠償はどうなるか/ 路上で寝ていた人を轢いた場合の過失割合/ 荷台から転落して死亡したときの過失割合/ 自転車に三人で乗っていた場合の過失割合/ 使用者責任と運行供用者責任の関係/ 時間外の無断運転中の事故、雇用関係のない者の事故はどうなるか/ 貸した車が起こした事故と貸主の責任/ 自動車の名義貸人の責任と盗難車が起こした事故の責任/ 損害賠償をした使用者は従業員に求償できるか/ 休業中に従業員の起こした事故はどうなるか/ 会社の車を無断で使用中の事故はどうなるか/ 修理工場の工員が起こした事故と所有者の責任/ 同乗していた経営者の責任はどうなるか/ 社員個人の車が通勤中事故を起こしたときは/ 好意同乗者が死亡したときの賠償責任/ ダンプ持込みの運搬業者が起こした事故責任/ 複数の車が人をはねたときの責任関係/ 家族全部が共同で働いていた場合の事故の責任/
copyrght(c).道路と交通の豆知識.all rights reserved