複数の車の事故による賠償はどうなるか

交差点で右折してきたダンプカーと衝突し、そのあおりでハンドルをとられて暴走して歩道に乗り上げ、通行中の主婦をケガさせてしまいました。私の方は直進してい たのですから、過失はダンプカーの方に多いと思いますのに、被害者の主婦はダンプカーの方に請求しないで私の方にだけ全額請求してきました。私は全額主婦に支払わなくてはならないのでしょうか。また、支払った後、ダンプ会社に請求することは可能でしょうか。

 民法七一九条は「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは各自連帯してその賠償の責に任ず」と規定されています。
 この趣旨は、共同の過失によって第三者に損害を与えた場合は、その第三者は過失ある一人を相手どって全額請求することもできるし、全員相手どって請求することもできるという選択権を被害者に与えたもので、被害者を厚く保護する見地からの規定と解されています。
 したがって、あなたに過失が少しでもあるかぎり全額を被害者に賠償しなければならない責任があるわけです。
 しかし、支払ったあなたが、その後どこにも求償することができず、最終的に全額を負担しなければならないということではなくて、その中の一部を過失のあるダンプ会社に求償して、回収し得ることになっております。

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本問の場合のような共同不法行為者間の債務の性質については、真正連帯債務であるか不真正連帯債務であるか、いろいろ学者の間では難しい争いのあるところですが、どちらの立場にたっても、負担部分に応じた分は求償できることには異論がなく、公平の原則に適応するやり方です。
 さて、共同不法行為の場合の各自の負担部分をどうみるかという問題ですが、通常の連帯債務であれば特別の事情がないかぎり平等に負担する取扱いになりますが、共同不法行為では、平等負担の原則を採らずに、共同不法行為者の各自の過失の割合に応じて決められるというのが判例の考え方 です。
 したがって、あなたの場合も、直進軍のあなたと右折車のダンプカーとの事故発生の寄与した過失の割合を判断してゆかなければなりません。相互のスピード、道路の幅員、信号の有無、ダンプカーの停止状況など、細かいことが不明なので正確な過失割合を説明することはできませんが、一般的な基準から申しますと、直進車優先という原則を重視すると、あなたの方が三、ダンプカーの方が七という過失割合になるのではないでしょうか。
 そうすると、あなたは被害者に支払った額のうち七割相当分は求償できるものと思います。求償する際の時効は支払ったときから三年と考えるべきです。相互の過失割合が不明の場合には、負担部分は五分五分となります。
 共同不法行為の形が二人でなく、三人以上からんだ場合でも、各自の過失割合に応じた負担部分の責任を負うことになります。この共同不法行為は、自動車同士の接触の場合が類型的には多いわけですが、それだけでなく、事故にあった被害者が医者の治療のミスで長引いたというようなときには、車の加害者と医者とが共同不法行為者の関係に立ちます。
 その他求償の関係についても、全額支払った使用者から作業員に対し、その中の一部を求償することが可能かどうか、あるいは自動車の貸主から借用した加害運転者に対し求償することが認められるかどうかなど複雑な問題もあります。
 従業員に対する雇主の求償は、従業員に重大な過失があれば全額とはいえないまでも、ある程度の回収は可能でしょう。

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