後遺症の場合の損害賠償の時期

ダンプに横断中に私ははねられ、その結果、神経系統がおかされてしまい、現在通院中です。相手の会社に損害賠償を請求したいのですが、いつ請求するのがいいのでしょうか。また、その事故のためにこうなったのだということはどのようにして証明すればよいのでしょうか。

 後遺症とは、具体的には外部に醜状を残す場合、眼・耳・歯の障害、脳障害、上肢下肢の機能的障害、内臓障害、関節傷害、管骨の奇形などが考えられます。
 このような症状を呈した場合、これが交通事故にもとづくものかどうかを何によって立証すべきでしょうか。このような場合は、事実上、専門家である医師の診断によるほかないでしょうが、診断書はできるだけ症状を詳しくかいてもらい、身体障害等級表の何級に該当するかを診断してもらう必要があります。簡単な診断書では後遺症を立証するためには不十分です。

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後遺症に対する損害賠償は、請求できますが、いつから請求できるでしょうか。それにはつぎの規定が目安になります。
 民法七二四条によると「不法行為ニョル損害賠償ノ請求権ハ被害者又ハ其法定代理人力損害及ヒ加害者ヲ知リタル時ョリ三年間之ヲ行ハザルトキハ時効二因リテ消滅ス不法行為ノ時ョリニ〇年ヲ経過シタルトキ亦同シ」となっています。「損害および加害者を知ったとき」とは加害者の行為が違法のものであることと、それによって損害 の発生したことの両方を知ったとき、と解されています。
 被害者が損害の発生の事実を知っていれば損害の程度や数額は知らなくても「損害を知った」ことになるのです。しかし、後遺症にはいろいろな場合のあることは前述のとおりですが、交通事故にあった日から損害発生の事実を知ったものとして取り扱われると、困った結果が起こります。
 たとえば、交通事故によって手足を切断されたという場合は、事故後、後遺症のあることがはっきりしていますから問題はないのですが、脳障害などの場合は、(1)治療の経過をみないと後遺症かどうか判明しない場合が多いし、(2)一定期間経週後に突然後遺症があらわれる場合もあります。
 このような場合にも事故のときに損害の発生事実を知ったものとして取り扱われると、被害者の請求権が時効消滅し権利の行使ができなくなる場合が多くなります。
 そこで(1)の場合は後遺症であることがはっきりしたとき、(2)の場合は後遺症があらわれたとき、はじめて「損害を知った」ものと解され、このときから後遺症に対する賠償請求ができることになります。
 後遺症の認定は、医師の診断によるほかありませんが、一般的にいえば、傷害に対する医療的効果が期待できなくなり、かつその症状が固定化した状態になれば後遺症といえるでしょう。
 また、顔の傷痕につき将来整形手術を必要とする場合その整形手術見込費とか、将来の義足代を現在請求できるでしょうか。この請求は認められるべきものですが、訴訟技術として、将来の整形手術の必要性とその費用支出の確実性、および将来の請求を現在請求しなければならない必要性を十分に立証しなければなりません。将来の義足代の請求は割合簡単に立証できるようですが、整形手術費の方は立証が困難です。

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