死亡したときの損害賠償の請求額は
一家の大黒柱である夫が交通事故で重傷を負い、看護の甲斐もなく二週間後に死亡しました。子供三人を抱え悲しみの涙にくれていますが、加害者には誠意がないので、強く請求しようと思います。どのような損害の賠償を請求できるでしょうか。事故は加害者の一方的過失から起こったものです。
心なき運転者の一挙動が、あなたの家庭の平和をいきなり鷲づかみにして悲しみの淵に投げ込んでしまったようです。心からの憤りを覚えます。落ちついて冷静に、といっても無理だろうと思いますが、それでも感情を抑えて賢明に対処してください。
まず、加害者に賠償を請求できる損害は、治療費、葬儀費用など実際にかかった費用(積極的損害)。事故で死亡しなかったら将来得たであろう利益(得べかりし利益、逸失利益)。慰謝料の三つに大別できます。
まず積極的損害は、治療費、入院費、付添費、交通費、葬儀費用など。加害者に賠償請求ができる損害かどうかは、その出費か必要なものであったかどうか(必要性)被害者の社会的地位または一般に価格的にみて、相当なものであったかどうか(相当性)常識的に納得できる出費であったかどうか(合理性)によって決まりましょう。
たとえば特別室入院料や温泉治療費などで医師の指示によるものは損害に入るでしょうし、特別の場合に、または特別な処置をしてもらった医師、看護婦への特別謝礼、見舞客接待の茶菓程度のものは、場合により必要性、相当往、合理性から判断して請求できるでしょう。
それに反して、好みで買った高価な着物、見舞客への返礼、快気祝、香典返し、などは損害とは認められないでしょう。なお、事故にあった場合、出費は細大もらさずメモして、できるかぎり領収証を揃えておくことが後日のために必要です。
得べかりし利益については、自家営業者の場合は給料生活者より算定が困難です。営業収益を、算定する方法としては、帳簿により算定する方法、税務関係の書類を基礎にする方法、官庁作成の各種所得調査報告書を基礎にして推定する方法、などがあります。
それらにより、死亡当時どれだけの収益があったか、以後、何年働き得たか、生活費としてどれだけ必要であろうか、を考えあわせて純益総額を算出し、これをホフマン式計算法により中間利息を控除して現在値を出すわけです。
慰謝料は、理論上は死亡者から相続した慰謝料請求権と、妻あるいは子のもつ固有の慰謝料請求権の両方を二本立で請求できますが、二本立だから二倍認められるというものではありません。あなた固有の慰謝料請求権で請求されたらすっきりしていいでしょう。
なお、慰謝料は相続人か四名だからといって一名のときの四倍認められる、というものでもありません。実務上は被害者一名につき全休として総額をだいたい決めて判断します。
前記の得べかりし利益の算定がハッキリできないというような事情のとき、裁判所は普通より慰謝料を高く認定してくれる場合があります。慰謝料に得べかりし利益の埋めあわせの役目をさせるのです。
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