店舗を壊された被害者の賠償請求は
自動車によって店舗を壊された被害者の損害賠償請求額が、実際生じた損害よりも不当に高く、示談解決できないでいる友人がいます。損害額の見積りで、加害者、被害者の間でくいちがいが出ることも多いのですが、こんなことにならないように解決するには、どうしたらよいでしょうか。
家や物を壊された被害者にたいしては、その損害について、加害者が損害賠償をしなければないことは当然のことです。しかし、なかにはたちの悪い被害者が、損害にかこつけて壊されなかった商品まで壊されたとして、損害額を水増しして請求してきたり、また店舗の一部しか壊されないのに、修理代にかこつけて店舗全部の改装費を請求してきたりすることも実際にはあるでしょう。
いくら運転者に過失があったからといっても、このような不当な要求には応ずる必要はありません。
このようなかってな要求を封ずるには、事故を起こした側で、あらかじめ被害の実情をよく確かめておけばよいわけです。それには事故が発生した直後に、その現場で、どのような物件がどのように壊されたかをよく調べておくことが肝要です。そして被害の実情をすぐその場で被害者にもよく確認しておいてもらうことです。
前述のように悪意をもって被害者の方で過大な請求をするつもりではなくても、壊れたものの価額や店舗の修理代などの損害額を、どのくらいに見積るかということは、被害者と加害者との間でくいちがうことが多いのです。
したがって、事故発生の直後に、被害者側と加害者側とで被害状況を調べて、損害の程度や損害額などについて、お互いによく確認しあっておくことは、被害者の不当な要求を拒否する手段であるのみならず、損害賠償額について相互に一致点を見い出して、早期に示談解決をする手段ともなるわけです。では壊した物についてどのような点を調べておいたらよいかというと、次のとおりです。
壊した物の種類、品目など、家ならば、住宅か店舗か、物ならば、どんな家具か、どんな陳列ケースかなど。商品ならば、その品目の明細や数量などを調べることです。
物を損壊した程度、事故によって物をどの程度に壊したかをはっきりしておかなければなりません。たとえば、家ならば柱を何木倒したか。建具類をどの程度にいためたか。また、商品ならば、まったく売物にならなくなってしまったのか、あるいはきず物くらいで処分ができそうかどうかなどです。
被害物件の価額の見積り、これが損害賠償金額算定の基礎になるのですから、できれば現場でだいたいの見当をつけておくことです。店舗の施設を壊せばその修理代、陳列ケースを壊したのならその時価、売れなくなった商品類の一価額などです。
とくに問題となるのは、店舗や商品が破損したため、休業しなければならなくなった場合の休業補償の金額算定方法または基準です。
休業期間中の営業利益は当然に損害賠償の対象となりますが、その休業日数が店舗修理のためにどうしても必要な日数であったか、営業利益の計算方法が妥当かどうかなどということです。
さらには、営業が再開された後の売上利益が従来よりも減少している場合に、その損害賠償まで請求できるかということも問題になります。裁判例でもこれを認めているものと、認めていないものとあり、まちまちですが、結局、具体的な事件ごとに、認められる場合と、認められない場合とあるということです。
当事者だけの話合いではなかなかまとまらないときは、双方とも専門家の意見を聞き合って、さらに話合いを進めるのがよいでしょう。
交通事故の賠償金はどのような法律によって定められているか/ 運行供用者の交通事故の責任/ ケガの場合の損害賠償の算出/ 死亡事故、物損事故の場合の損害額の算出/ 死亡したときの損害賠償の請求額は/ 得べかりし利益の算定の仕方/ 弁護士費用はいつでも請求ができるか/ ケガの場合に請求できる損害の範囲/ 働けないほどケガをしたときの損害賠償は/ 後遺症の危険があるときの被害者の心得/ 後遺症の場合の損害賠償の時期/ 交通事故で財産上の損害を与えたときはどうなるか/ 店舗を壊された被害者の賠償請求は/ 歩行者が落とした時計をひいたら全額弁償を要求された/ 急ブレーキをかけて故障したときの賠償請求/ 犬が轢かれたときの賠償請求/ 車の修理費や代車料は賠償請求できるか/ 過失相殺とはどのようなことをいうのか/ 誰に対しても過失相殺は主張できるか/ 裁判所では過失相殺をどのように運用しているか/ 自動車保険でも過失相殺をされるか/ 被害者の息子の過失のために事故が起きたとき/ 入院中の態度が悪いために被害が拡大したとき/ 過失割合の認定基準/ 好意同乗者はどれほどの過失相殺をされるか/ 横断歩道上の事故でも過失相殺されるか/ 飛出し事故の過失割合はどのくらいか/ 追突事故では過失割合はどう認定されるか/ 交差点で衝突したときの過失割合/ 複数の車の事故による賠償はどうなるか/ 路上で寝ていた人を轢いた場合の過失割合/ 荷台から転落して死亡したときの過失割合/ 自転車に三人で乗っていた場合の過失割合/ 使用者責任と運行供用者責任の関係/ 時間外の無断運転中の事故、雇用関係のない者の事故はどうなるか/ 貸した車が起こした事故と貸主の責任/ 自動車の名義貸人の責任と盗難車が起こした事故の責任/ 損害賠償をした使用者は従業員に求償できるか/ 休業中に従業員の起こした事故はどうなるか/ 会社の車を無断で使用中の事故はどうなるか/ 修理工場の工員が起こした事故と所有者の責任/ 同乗していた経営者の責任はどうなるか/ 社員個人の車が通勤中事故を起こしたときは/ 好意同乗者が死亡したときの賠償責任/ ダンプ持込みの運搬業者が起こした事故責任/ 複数の車が人をはねたときの責任関係/ 家族全部が共同で働いていた場合の事故の責任/
copyrght(c).道路と交通の豆知識.all rights reserved