荷台から転落して死亡したときの過失割合

私のところの社員が工事に行く途中、助手席に乗せればよいのに、小型トラックの後部の荷台に日雇人夫を乗せていたところ、その人夫が進行途中、荷台から落ちて 亡くなりました。会社の仕事をしている最中ですから、その人夫の遺族に対して賠償する義務はあると思いますが、全額支払わなくてはいけないものでしょうか。

 小型トラックの荷台に人を同乗させることは道路交通法五五条の車両の乗車のために設備させた場所以外に乗車させてはならないという規定に反しますので、違法な乗車をさせた運転者に過失があります。
 しかも、運転者として荷台は転落事故を起こしやすい危険な場所であるから、走行するについて、荷台の人の動静を十分注意して急加速を加えたり、凹凸のあるような道路を通らないように注意して進行しなければならない義務もあるわけです。

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しかし、このような注意を欠いて、その人夫を振り落としたようですから、運転者にも多大な過失が見られます。
 一方、荷台に同乗した人夫も、荷台という危っかしい場所に同乗したから、転落しないように良く注意し、安全な姿勢を保っていなければならないのは当然です。しかし平坦な道路上で転落したということは転落を防止するような措置を自ら講じていなかったように思われますので、本件事故発生の一因になったものと言えるでしょう。
 これらの事情から判断すると、被害者の方にも四〇パーセント程度の過失が見られるのではないでしょうか。もし平坦な道路でなく、凹凸の激しい道路を走行していた 時であると、被害者の過失は二〇パーセント程度に減少するでしょう。このように同乗者が同乗するについて過失がある場合に当然、その過失をもって過失相殺されるわけです。
 同乗者の過失ということで過失相殺した例をあげてみましょう。酔っぱらいの運転をする車に同乗し、市街電車の安全地帯に衝突し、ケガをした被害者が運転車に損害賠償を請求した事例で、被害者は事故当時、運転者が相当飲酒して正常な運転をするのは大変難しい状態にあったのを知っていたから、被害者は、当然運転者の酔のさめるのを待ってから同乗するのが常識であるのに、それを無視して同乗したことは、事故についても責任のいったんを負わなければならない点があるとして約三五パーセントの過失相殺をした例。
 ちょっと興味をひく判決は同じ病院に勤務する医者(加害者)が夫のある看護婦を食事に誘い、その後、深夜危険な岩壁に自動車を止めて不倫な関係を結ぼうとしたところ、サイドブレーキが緩んで海中に転落し死亡した事故について、その看護婦が夫のある身でありながら真夜中に危険な場所に同行したという点に過失があるとして二割の過失相殺をした例などがあります。
 その他、本件の質問とよく似ている例として、慰安旅行で富士山の五合目まで行った帰りに、被害者がその途中で飲酒して相当に酔っぱらってしまい、運転者は被害者に飲み過ぎないように注意していたのに、酩酊状態で荷台に同乗 し、そこで運転中はやむを得ずゆっくり発進したところ約一〇メートルぐらい進行したところで被害者が転落死亡した事例で、被害者に九割の大幅な過失相殺をしたものがあります。

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