車の修理費や代車料は賠償請求できるか
私は青果業を営んでいる者ですが、先日車を店舗の前に止めて積荷を下ろしていたところ、大型トラックが私の小型トラックにぶっかり、車が中破してしまい、当分使
えなくなりました。幸いケガ人は出なかったのですが、事故の原因は大型トラックの運転手が居眠りをしていたためと警察の取調べでわかりました。こんな事故の場合に、はたして私は、どんな損害賠償ができるのでしょうか。
この事故のように、物を壊された事故のことを物損事故と一般に呼び、人をケガさせたり死亡させたりする人身事故と区別して呼んでいます。
この物損事故が人身事故と異なる主な点は、人身事故が損害賠償を請求する場合に自動車損害賠償保障法三条によって請求でき、この場合は被害者の方で加害者に過失があったことを立証する必要はなく、ただ損害がいくらかを出せばよいのに対し、物損事故では被害者の方で、加害者に故意あるいは過失があったために事故が起きたということを立証しなければならない点です。
さらに、車の使用者に対し損害賠償を請求する場合、人身事故では被害者の方は立証する必要はなく、加害者の方で責任のないことを立証しなければならないのに対し、物損事故では、加害者か外観上使用者の乗務であるという形態のないかぎり、使用者の責任を追求できない点にあります。
以上のようなことを理解していただいた上で、本問の場合の事故の損害賠償をみていきましょう。
まず、あなたの車が修理すれば使用できるという場合には、修理費用が損害となります。修理費用には、通常は材料費と工賃との合算額となります。また、修理費用が高くつき、新車を買った方か安くなるという場合ですが、この場合は、判例もまちまちですが、「加害者の負担すべき損害は、最高限度、事故直前の車の時価額」というのが通説的な見解とされています。
つぎに、青果業ということですから、おそらく毎日市場へ出かけて、商品を運ぶ車であろうと推測しますが、そうならば事故後、あなたの車が使えないわけですから、修理業者から代わりの車を借りて使うか、あるいは同業者の友人にでも頼んで商品を遅んでもらわなければならないでしょう。
前者の代車を借りた場合ですが、この場合には車の借上料(借賃)が、損害賠償の対象となります。
代車の使用料は、あなたの場合のように業務上やむを得ず借用し、現実に賃料の出費があった場合にかぎり認められるものです。この場合、出費を免がれた費用があれ
ば、もちろんこれを差し引いたものに、休業期間をかけたものが代車料となります。
つぎに後者の場合ですが、もし同業の友人の車で商品を運んでもらったために、時間的に商品を店舗に並べるのが遅くなり、通常の売上げに比べて売上げ加減少したときは、この分を損害賠償として請求できるでしょうし、友人に運んでもらったことに対して、お礼をすれば、これも一般的にみて相当なものであれば、これも損害賠償の項目として認められるでしょう。
それでは、車が事故にあったため、店を休まざるを得ないという場合はどうでしょうか。どうしても車を使わなければ営業ができないというように、事故と営業との間に相当な関係があれば、事故により休業せざるを得なかったと認められますから、その問の収益減は、休業補償として損害賠償できるでしょう。
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