飛出し事故の過失割合はどのくらいか

Aさんは自動車の往来の激しい県道を坑木を満載して軽トラを運転していました。その途中、尿意を催したので車を左端に止め、その車の陰から前かがみの姿勢のままで道路の左右の安全を確かめないで道路中央に飛び出したため、折から走ってきたバスに衝突し、大ケガをしました。この場合Aさんの過失割合はどのくらいでしょうか。

 歩行者は特別の事情のないかぎり自動車の直前直後で道路を横断してはならないことになっています。
 その上見通しの悪い塀や垣根の間から急に道路に飛び出すことは、非常に危険な行為ですから、厳重につつしまなければならない行為です。したがって、Aさんが往来の激しい道路上に急に飛び出したことは重大な過失があると言わねばなりません。その過失は八〇パーセント程度あるのではないでしょうか。これににかよった判例でも八四パーセントの過失相殺をしているものがあります。
 しかし、事故現場の付近に商店が立ち並んでいたり、そこに駐車中の車の列があり人通りが激しい状況でしたら、その駐車中の車の陰から飛び出したとしても、先ほどのように被害者にきびしい割合の過失相殺を適用されることはないでしょう。
 判例の中には、そういう情況があったときに、歩行者保護の立場を強くうち出し、慰謝料分だけに斟酌したというものもあります。

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路上における飛び出し事故で、一番多い例は幼児の飛び出しです。幼児の場合に過失相殺を適用する場合、どの程度の能力が必要かについてはむずかしい議論があります。その点については別項を参考にしてください。
 幼児の場合の飛び出しについては一般に大人の場合に比較してその過失の割合は少なくなっています。東京地裁で、四才の誕生日に交通事故にあいケガをした幼児に四〇パーセントの過失相殺を適用したものがありますが、大人でしたら六〇パーセントぐらいの適用を受ける事件ではないでしょうか。
 飛び出し事故でなくて一般に横断歩道外のところを左右の安全を怠らずに歩行した場合、歩行者に二〇パーセント程度の過失割合があるといわれます。
 事故現場の付近に横断歩道や歩道橋があるのに、そこを通らず付近を横断した場合は、歩行者には道路交通法一二条により、付近に横断歩道がある場合には、その横断歩道によって道路を横断しなければならない義務がありますから、この義務に違反したことになり、その過失はきびしく追及されます。
 したがって歩行者の過失は六〇パーセント程度過失相殺されることになります。
 横断歩道の付近とはどのくらいをさすかといいますと、事故付近の道路環境や交通量などによって具体的に決めなければいけないのですが、判例では五〇メートル以内とするものが比較的多いようです。酔っぱらって夜間に横断歩道を通らずに交差点内を斜めに横断して事故にあった歩行者に対して七〇パーセントの過失相殺を適用したものがあります。
 交差点付近の横断については、自動車としては除行をしたり、とくに注意をしなければならない義務が課せられていますので、普通の横断の場合に比べて過失割合は軽くなり、一般に車が九〇パーセント、歩行者が一〇パーセントと言われています。

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