ケガの場合に請求できる損害の範囲
交通事故によるケガのため、一ヵ月近く入院しました。相手方も誠意ある態度ですので示談を結びたいと思いますが、損害賠償として請求できるのは、どんな範囲のものでしょうか。
交通事故によってケガをした場合に、損害賠償を請求できる範囲は、民法および判例によって原則が確立されています。したがって、被害者に生じた損害ならば、どんな損害であっても請求できるというわけではありません。抽象的な基準は、あくまで通常生ずる損害です。
実際にかかった費用、治療費等は、実際に被害者のフトコロが痛むわけですから、ケガが原因で支出があれば、それも当然請求できる範囲に入ります。したがって実際に支出した費用は損害賠償として請求できる、と考えてもよいでしょう。
実際に金を支出しないときでも損害賠償として請求できるのは、家族の者の付添の場合の付添費、慰謝料、逸失利益等です。
つぎに請求できる損害について個々の項目ごとに説明しましょう。
交通事故が発生した場合、ケガ人を病院まで送る費用、あるいは川に落ちたケガ人を川から引き上げる救助費なども当然損害賠償を請求できる範囲に入ります。自動車が営業車ならば、規定料金を支払った領収証によって証明できます。通りかかった自家用車にたのんで運んでもらった場合の謝礼も、妥当な金額ならば、営業車の場合と同様に考えてよいと思います。
治療費は正式に認められた病院、医院等の治療費は問題なく請求できます。治寮費で請求できないのは、社会や公の機関から公認されていない治療費、たとえば宗教まがいの治寮費です。温泉療法も医者が認めたものは、治療費として請求できるはずです。
付添費は、ケガの程度、ケガの種類によって、医者が必要と認めた場合は請求でき
ます。妻とか娘とか家族の者に付添をしてもらった場合でも、プロの家政婦の七割とか八割とかの金額で請求できます。
これに反して、ケガが割合に軽く、身の回りの始末などが自分でできる場合には、実際に家政婦を依頼したとしても損害にはなりません。
通院費は、タクシーが必要であると認められる場合には請求できますが、必要もないのに高級車のハイヤーをたのんでも認められません。
入院中の永代、布団代、吸呑代等の諸雑費も請求できます。寝具の新調費用は、退院後も使用できる場合は認められません。
入院期間が長く、その布団を使い切ってしまえば、請求できるはずです。
義手、義足等の費用、下半身麻疹のとき
に使用する車椅子代も当然請求できます。
ここにのべたのは積極的損害といって、被害者が実証に支出したものですから、あまり問題になることはありません。
つぎに請求できるものは、休業期間中の損害補償と、慰謝料ですが、これは算定上当事者の意見がくい違うことが多い損害です。休業補償は、ケガで入院中、あるいは自宅療養中に働けなかったことによる収入減の補償ですから、事業主の証明書、源泉徴収票、などで証明する必要があります。
正確にいえば、収入から経費を差し引く必要があります。主婦の場合は収入がありませんが、家政婦を雇えば、一日数千円近くの支出が必要です。家政婦の費用は、実際にかかった分の請求ができますが、家政婦を雇わずに、他の家族か協力して家事に従事した場合でも、一定額を請求することになります。
ケガによって手が不自由になったような
場合、後遺症に対する損害賠償の請求ができます。後遺症のために働けなくなれば、将来の収入滅も損害として請求できます。
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