賠償額の不当請求
私は、自動車を運転中、スリップして道路沿いの雑貸店に車を突っ込み、陳列ケースや商品をこわしました。幸い死傷者はありませんでしたが、被害者から損害賠償として四〇数万円を請求されています。私の概算では、一五万円程度としか考えられず、何としても不当な要求だと思いますが、その請求に応じなければならないのでしょうか。
最近、被害者のなかには、被害にあったのをチャンスとして、金もうけをたくらむ人がいますが、賠償はあくまで損害を償うものですから、これによって利益を得ることまではできません。
あなたの場合、相手方の請求が不当と思われるならば、まず、相手方に対し損害の内訳明細書や領収書を見せてもらい、それでも疑念が晴れないなら、物品の購入先や修繕業者などに問い合わせ、その説明を聞かれたらよいと思います。そして、相手方の請求が、実際上の損害額をこえている場合には、相手方にその点を指摘して納得させればよいのです。
もし、相手方が損害の内訳などについての根拠を示さなかったり、損害額以上の金額を請求してやまないということならば、あなたとしては、その請求を拒否するほかないでしょう。
その場合、相手方は訴訟を起こすかもしれませんが、裁判所は、その根拠の明らかでない損害については賠償を認めませんから、結局、相手方は、多くの時間と経費がむだにしたうえ、真実の損害額しか受けられないということになります。
本問の事例の場合、最初の交渉がどのようになされたのか、よくわかりませんが、本来ならば、事故直後、その場で被害者と話し合い、必要によっては修理業者その他の人たちに立ち会ってもらい、被害の程度をよく調べて、賠償金額やその支払方法をとりきめておくべきだったと思います。その点、あなたの方にも手ぬかりがあったのではないでしょうか。単なる物件事故で金で解決できると軽く考え、相手方に「あなたの方で適当に修理しておいてください。金は必ず支払いますから」などといっておきますと、その修理や物品代金があなたの予想していた内容と多少異なっていたとしても、その代金の領収書などを示されれば、支払わないわけにはいかないでしょう。もっとも、その修理の方法などが全く非常識で誰が見ても妥当でないと思われるようなものであるならば、あなたは、社会的にみて妥当な修理額程度にまで減らしてもらうことができます。
いずれにしても、物件事故の場合は、特に事故直後における交渉が非常に大切で、その巧拙は賠償額に大差を生じさせることになりますから、十分に注意することが肝要です。
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