被害者としての現場措置
誰でも、交通事故の被害者になりたいとは思わないのですが、事故は予測しないときに襲ってきます。万一あなたが、あるいはあなたの同伴者や同乗者が事故に遭った場合に、現場でどうしたらよいでしょうか。もちろん、あなたが重傷を受け、人事不省に陥ったような場合はどうすることもできませんが、そうでない場合や、同伴者、同乗者が事故で死傷した場合は、次のような措置をとったらよいでしょう。
スポンサーリンク被害者は、出血をしているときは、自らあるいは加害者その他通行人などの救護を得て止血する措置をとらなければなりません。出血がはなはだしく人体の血流量の三分の二を失うと死の危険があるといわれていますから、止血はすみやかに行なう必要があります。
しかし、その恐れのないときは、できるだけ身体を動かさないようにします。特に足や腰のねん挫や頭を打ったような場合には、救急車がくるまで絶対に動いてはいけません。あわてて立ったり動いたりしますと、治療日数が何倍あるいは何十倍にもなることがあります。
つぎに、現場保存をできるかぎりすることです。たとえば、メモしたり、写真をとったり、警察官に提言して記録してもらったりします。特に自動車など相手の物件が関係している事故の場合は、警察官が現場に来るまで自動車を動かしたりしないで、事故時の状況をそのまま残しておくのがよいでしょう。もっとも、大都市の交通のはげしいところでは困難な場合もありますから、このような場合には適宜の措置をとるほかはありません。
相手の運転者の氏名、住所、勤務先、自動車のプレートナンバー、自動車損害賠償責任保険証明書の保険会社名、証明書番号、加入年月日をノートすることです。
これらの点は、たとえ軽傷の場合でもはっきりさせておくことが大切で、これをしておかないと、後になって損害賠償を請求したくても相手がわからず困ることが少なくありません。したがって、どんな軽い傷でも必ず医師の診断を受けるとともに、運転者の氏名やプレートナンバーは控えておく必要があります。
もし、相手が責任保険証明書をみせることを拒んだ場合や、運転免許証を見せないため運転者の名前がわからないときは、プレートナンバーをメモしておき、すみやかにもよりの警察に調べてもらえばよいでしょう。
次に、直ちに医師の診断を受け、さらに、警察に届け出ることです。もし不幸にして、あなたが負傷していたときは、どんな軽い傷だと思っても直ちに医師の診断を受けておくべきです。何ともないと思い医師の手当を受けなかったところ、後で痛みだしたので診断を受けたら実は一ヵ月以上の重傷であったり、ひどいのになると翌日ポックリ死んだという例もあります。
また、警察へ届け出ることは被害者側の義務ではありませんが、その後加害者から知らん顔をされたりしますと、損害賠償や強制保険金の請求の際、その車ではねられた立証に困ることかおりますから、相手方運転者が警察への届出を渋るような場合には、直ちに被害者側から届け出て「事故証明書」をもらっておくことです。
次に、ひき逃げまたはあて逃げをされた場合は、直ちにその自動車のプレートナンバーを見て、これをメモしておくことです。もしその余
裕がなかったときは、自動車の種類、型式、その他の特色を覚え、すぐ警察に報告しましょう。またこの場合警察からもらう事故証明書には「ひき逃げ」と明記してもらっておく必要があります。そうすれば、その運転者がわからなかった場合でも、政府の自動車損害賠償保障事業によって、強制保険金と同額の金だけは手に入れることができます。
なお、ひき逃げ、あて逃げをされた場合にこれを追跡してつかまえて交渉することも、もちろん許されます。裁判例でも「損害賠償請求権の実行を確保するためには少なくとも同人(ひき逃げ運転者)を逮捕し、即時同人と賠償につき交渉するか、あるいは逮捕して同人の本名・住所などを確認し、後日必要な法律上の手続をとるための最小限度必要な行為は、いわゆる自救行為として当然許される」と判示しています。そして、この場合、「被害者が女性であるような場合には、同女の明示または黙示の依頼により、あるいは同女の意思をそんたくして即座に同女を援助し、同女の自叙行為を代行することは法治国家においても私人の当然なし得ることとして許容されるものと解する」といっています。
加害者の責任/ 事故現場での措置/ 被害者としての現場措置/ 運転者の注意義務/ 損害賠償責任の免除/ 過失の立証責任/ 警察の民事不介入/ 民事責任と刑事責任/ 法律扶助と訴訟扶助/ 共同不法行為の連帯責任/ 未成年者の賠償責任/ 加害者の相続人の賠償責任/ 車の貸主の賠償責任/ 組合の車の事故責任/ 修理中の車の事故の責任/ 所有権留保付割賦払い自動車の事故責任/ 身元保証人の責任/ 事務管理/ 損害賠償の範囲と種類/ 車両間衝突の賠償範囲/ 物損の賠償責任/ 営業上の損害賠償/ 賠償額の不当請求/ 休業補償/ 将来の必要費/ 交通事故の特別損害/ 交通事故の影響による近親者の健康被害/ 得べかりし利益の算出方法/ 交通事故による稼働能力の喪失、低下による逸失利益/ 交通事故の損害賠償での控除項目/ 交通事故の慰謝料の算定/ 交通事故の被害者が慰謝料を請求できる場合/ 近親者の慰謝料請求権/ 交通事故の過失相殺/ 交通事故の過失の割合/ 交通事故での保護者の監護義務と過失相殺/ 交通事故被害者の事後過失/ 第三者の事後過失等の介入/ 社員の私用運転による事故/ 社員の通勤車での事故/ 非社員による会社の車での事故/ 下請会社の事故による親会社の責任/ 名義貸しでの賠償責任/ 使用者の免責事由/ 使用者の従業員に対する補償/ 使用者の従業員に対する求償/ 会社役員の代理監督者責任/
copyrght(c).道路と交通の豆知識.all rights reserved