法律扶助と訴訟扶助

交通事故にあい悲惨な状況に陥りながら、訴訟費用や弁護士費用がないため裁判を起こすこともできないで泣き寝入りしている気の毒な被害者も少なくないようです。これでは、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」と規定した憲法の精神が泣くというものでしょう。民主的文化国家として国の名誉にもかかわることです。
このような境遇に立たされた被害者の方は、まず、何よりも各都道府県にある弁護士会の交通事故処理委員会を訪ねるのがよいと思います。この場合の相談相手は専門の弁護士であり、敏速丁寧に取りはからってくれるでしょう。もっとも、なかには委員会を訪ねたが、あまり具体的には何もしてくれなかったと不満を述べる人もおりますが、それはこの委員会が弁護士会の機関で、個々の事件そのものに介入することはその中立性、公平性からいって妥当ではないという考えから、処理に制限があるからと思われます。したがって、具体的な事件の処理そのものについては、希望に応じて、事件を引き受けてくれる弁護士を斡旋するのにとどまりますが、少なくとも今後どのようにしていけばよいかの指針は与えてくれるでしょう。そして、委員会から紹介された受任弁護士の費用、報酬については、それぞれの目的の価額(賠償請求額)または受ける利益の価額、事件の難易、費やすべき労務の量および当事者の経済事情などを考慮したうえ委員会で定めてくれるのが普通ですから、おそらく弁護士費用としては最低のものと考えられます。なお、本人の経済状態がひどく困っているような場合には、後述の訴訟扶助や法律扶助の方法についても説明をしてくれるでしょう。もちろん、この委員会の相談については、一切無料です。

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このほか、無料で交通事故の相談に応じてくれる所としては、次のようなものがあります。

警察署の窓口
一番てっとり早いのは、最寄りの警察署を訪ねて相談することです。警察署の中には、「交通事故相談」または「困りごと相談」あるいは「家事相談」などの看板を掲げているところがありますから、係官に相談すれば、あなたの質問に答えてくれるでしょう。また、各警察署のほか、警視庁では「警視庁交通相談所」をおいています。
しかし、警察は、「民事不介入の原則」がありますから、具体的ケースの仲介(相 手方との直接折衝)などはしてくれません。

交通安全協会交通相談所
都道府県交通安全協会の交通相談所は、各都道府県内に設置されています。
また、このほか、数市町村の地域を単位とする地区交通安全協会等が交通相談所を設けています。
いよいよ裁判の段階に入り、裁判所に納める訴訟費用にさえことかくときは、裁判所に対し訴訟扶助の申立てをしますと、裁判所は、あなたに勝訴の見込みが全くない場合を除いて、通常あらかじめ納めるべき裁判費用の支払を猶予してくれます。そして、あなたが勝訴したときには、裁判所は原則として負けた相手方から費用をとりたてることになるわけです。
いうまでもなく、民事訴訟を起こすにはどうしても訴訟を維持遂行するための費用がかかります。この費用は、原則として敗訴当事者の負担となり、最終的には勝訴者が敗訴者から取り立てのできるも のですが、勝訴するまでは身銭をきらなければなりません。しかし、日常生活にも事欠くような人が、この費用を捻出できないため訴訟を起こすことをあきらめなければならなくなるようなことになれば、前述の憲法三二条の精神にも反しますので、このような訴訟救助の制度が設けられたのです。
救助の申立てをするには、当事者または参加人が、
(1) 訴訟費用を支払う資力のないこと。
(2) 勝訴の見込みがないわけではないこと。
という二つの条件を具えている必要があり、また、それを疏明しなければなりません。資力のないことについての証明としては、「生活保護法による生活扶助を受けていることの証明書」とか「失業保険金受給証明書」などが普通ですが、営業不振で全資産を費消しつくして全く無資力となり、日常生活にも著しく困窮しているような場合は、区長や市長などに「生活困窮証明書」を出してもらい疏明するほかないでしょう。
交通事故事件の損害賠償請求事件の訴訟を起こすことは、素人にとっては大変むずかしいことですから、どうしても弁護士に依頼したいところです。しかし、弁護士費用を支払うことができないほど貧しい人は、「法律扶助協会」に相談されたらよいと思います。法律扶助協会は各都道府県の地方裁判所所在地の弁護士会内にあり、この協会に依頼しますと、あなたの生活事情と事件の内容とをみたうえ、担当の弁護士をつけ訴訟の費用や弁護士に対する手数料を立て替えてくれます。この場合、通常、依頼者が最初にどの程度までは自分で払えるかを調べ、それ以上の費用だけを立てかえ、事件が終わってから返済させることになっています。この法律扶助の場合も、訴訟救助の場合と同様、生活保護を受けているかどうかを標準としているようです。

加害者の責任/ 事故現場での措置/ 被害者としての現場措置/ 運転者の注意義務/ 損害賠償責任の免除/ 過失の立証責任/ 警察の民事不介入/ 民事責任と刑事責任/ 法律扶助と訴訟扶助/ 共同不法行為の連帯責任/ 未成年者の賠償責任/ 加害者の相続人の賠償責任/ 車の貸主の賠償責任/ 組合の車の事故責任/ 修理中の車の事故の責任/ 所有権留保付割賦払い自動車の事故責任/ 身元保証人の責任/ 事務管理/ 損害賠償の範囲と種類/ 車両間衝突の賠償範囲/ 物損の賠償責任/ 営業上の損害賠償/ 賠償額の不当請求/ 休業補償/ 将来の必要費/ 交通事故の特別損害/ 交通事故の影響による近親者の健康被害/ 得べかりし利益の算出方法/ 交通事故による稼働能力の喪失、低下による逸失利益/ 交通事故の損害賠償での控除項目/ 交通事故の慰謝料の算定/ 交通事故の被害者が慰謝料を請求できる場合/ 近親者の慰謝料請求権/ 交通事故の過失相殺/ 交通事故の過失の割合/ 交通事故での保護者の監護義務と過失相殺/ 交通事故被害者の事後過失/ 第三者の事後過失等の介入/ 社員の私用運転による事故/ 社員の通勤車での事故/ 非社員による会社の車での事故/ 下請会社の事故による親会社の責任/ 名義貸しでの賠償責任/ 使用者の免責事由/ 使用者の従業員に対する補償/ 使用者の従業員に対する求償/ 会社役員の代理監督者責任/

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