労災保険

労災保険とは、仕事中に負傷したり、あるいは病気にかかったり、死亡した労働者やその遺族に対する災害補償を迅速、公正に行なうことを目的としている保険です。
 もともと、このような労働者の業務上の事故に対しては、労働基準法第8章の規定によって事業主が一定の補償を行なわなければならないことになっています。しかし、事故が多かったり、一度に大事故が起こったという場合などには、事業主が労働基準法による災害補償を独自に行なうことは、経済的に大変な負担となります。とくに余裕のない中小企業等では、災害補償を行なえないという事態も生じかねません。
 このような場合に、この事業主の災害補償責任を事業主同士で負担しあえば、事業主が個別に多額の出費をすることが避けられ、しかも被災労働者やその遺族も安心して災害補償をうけることができるようにしようということから、労災保険制度が設けられたのですが、常時使用労働者5人以上の事業場と、特に災害発生の危険が多いと考えられる事業を強制適用事業とし、それ以外の事業を任意適用事業としています。

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この保険は、事業主を保険加入者、政府を保険者とし、事業の所属労働者をいわば被保険者という形で成立し、保険加入事業において、その事業の労働者が業務上の傷病等をこうむったときには、政府がその被災労働者またはその遺族に対して直接保険給付を行なうというしくみになっています。このために、保険加入者である事業主は、一定の保険料を政府に納入し、政府は、この財源によって労災保険事業を運営することとなっています。
 この労災保険に関する事務は、中央では労働省が、地方では各都道府県の労働基準局および労働基準監督署が取り扱うことになっています。
 労災保険が業務上の傷病をうけた労働者に対して行なう保険給付には、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料および長期傷病補償給付があります。
 療養補償給付とは、業務上の傷病により療養を必要とする場合に支給されるもので、一般にいう治療費に相当するものです。療養補償給付の内容は具体的には、診療、薬剤または治療材料の支給、処置手術、病院または診療所への収容、看護、移送、ということになります。
 この療養補償給付は、原則として労災病院または労災保険の指定する病院もしくは診療所もしくは薬局において療養行為を行なうこととしており、これを療養の給付といいます。
 ただし、例外としてその地域に指定病院等がなかった場合とか、特殊な医療技術や医療施設を必要とする傷病で、近くの指定病院等にこれらの技術や施設が整っていないという場合などには、その療養に要した費用を現金補償することも認められており、これを療養の費用の支給といいます。
 なお、療養補償給付については療養に要するものの全てを給付するのではなく、政府が必要と認めるものに限るという一般的な基準が設けられています。
 休業補償給付とは、業務上の傷病により療養をしている労働者の賃金を保障するためのものです。また、この補償給付の内容は、休業1日について給付基礎日額の60%の額が支給されます。ただし、休業補償給付には、3日間の待期期間が設けられており、休業当初の3日間分は、労災保険からは支給されないので、事業主が労働基準法による災害補償として直接労働者に補償を行なうことになります。
 なお、給付基礎日額は、労働基準法12条により算定される平均賃金に相当する額によることとなりますが、最低保障額が設けられており、この額より低い平 均賃金額の場合には最低保障額をその労働者の給付基礎日額とすることとされています。
 障害補償給付とは、業務上の傷病のために身体障害を残した労働者に対して、その身体障害のため失われた労働能力の損害を補償するためのものです。障害補償給付は、被災労働者の治ゆ時の身体障害の程度に応じて第1級から第14級までの14段階かに区分されており、重い方の第1級から第7級までを障害補償年金、軽い方の第8級から第14級までを障害補償一時金というように2種類に区分し、それぞれ年金または一時金が支給されることとなっています。
 なお、障害補償年金を受けている労働者の障害の程度が自然的経過によって増進したりまたは軽減したという場合には、新たに該当することとなった障害等級に応じた障害補償年金または障害補償一時金が支給されることとなって、それまでに支給されていた障害補償年金は支給されないことになります。

対物賠償保険金が支払われる事故/ 対人賠償保険金の支払われる事故/ 賠償保険の対象者/ どのような場合に賠償保険金を支払ってもらえないか/ 他人から預かっているものを破損した場合の賠償保険/ 記名被保険者に対する賠償保険/ 従業員の自動車事故による負傷に対する賠償責任/ 自動車事故によって同居親族に傷害を与えた場合/ 相手の車の格落ち損害も賠償保険の対象になるか/ 相手の車の休車損害や代替車費用も賠償保険の対象になるか/ 相手の車にも不注意のある場合の賠償金の支払/ 相手車との衝突で第三者の物件を損壊した場合の賠償責任/ 争訟費用も賠償保険の対象となるか/ 対人賠償保険で支払われる損害の範囲/ 好意同乗者に対する保険の適用と共同不法行為の決済方法/ 過失相殺される場合の自賠責保険と任意賠償保険との関係/ 搭乗者傷害保険金が支払われる事故/ 搭乗者傷害保険の保険金の算出方法/ 搭乗者傷害保険金の支払われない場合/ 搭乗者傷害保険を貰った時は賠償請求金額を減額されるか/ 事故が発生した場合の一般的義務/ 事故が発生した場合の各担保種目別の当面の処置/ 示談の前には保険会社の承認が必要/ 交通事故の示談書の内容/ 保険金の支払い請求権者/ 交通事故被害者が直接保険金を請求する場合/ 示談の前の保険金の支払/ 交通事故を対象とする傷害保険の種類/ 傷害保険でいう身体の傷害/ 交通事故傷害保険の対象となる事故/ 死亡保険金の支払われる場合/ 後遺障害保険金/ 医療保険金/ 傷害保険を申込むときの問題点/ 傷害保険が重複した場合の処理/ 傷害保険金が支払われない場合/ 第三者から賠償金を受領した場合の傷害保険金/ 傷害保険の請求手続き/ 生命保険と傷害保険/ 労災保険/ 通勤途中の電車での事故/ 出張の帰路の際に知人の車に便乗している間の事故/ 従業員の慰安旅行中の事故/ 労働者の重大な過失による災害も労災保険の対象となるか/ 第三者行為災害の意義/ 労働保険の給付と損害賠償や自賠責保険との関係/ 労災保険給付にあたっての加害者からの賠償の控除/ 求償や控除の範囲/ 同僚労働者の加害の場合に求償権を行使しない場合/ 示談と労災保険給付の関係/

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