死亡保険金の支払われる場合

被保険者が、自動車事故などの急激、偶然、外来の事故によって、身体に傷害をこうむり、その直接の結果として被害の日から180日以内に死亡したときは、保険金額の全額が死亡保険金として支払われます。
 傷害の直接の結果として疾病にかかり、それによって死亡した場合も、その間に相当因果関係があれば、死亡保険金が支払われます。たとえば、自動車事故で頭部を強打して脳内出血を起こし、その結果として、えん下性肺炎を起こし死亡した場合、最終かつ直接の死因は肺炎であっても、これは傷害に起因する死亡と認められます。
 傷害と関係なく疾病を併発し、疾病によって死亡した場合には、死亡保険金は、支払われず、疾病がなかった場合に相当する医療保険金ないし後遺障害保険金のみが対象になります。
 死亡は、事故に遭った日から180日以内に起こることが要件になっていますので、事故後1年経って、とつぜん、自動車事故の際に受けたと思われる脳内出血が顕在化し、死亡したような場合には、死亡保険金の対象にはなりません。
 車ごと海に転落し、被保険者が行方不明になったような場合は、事故の状況を十分調査したうえ、相当な期間を経過した後、死亡と認定して処理することが行なわれます。
 なお、ここでいう相当な期間とは、具体的な事故発生状況にもよりますが、通常30日から90日位でしょう。もちろん、海に転落したというような具体的な事故が発生していることが必要で、単なる行方不明では、いくら期間が経過しても保険事故にはなりません。

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支払われる保険金は、あらかじめ約定された保険金額の全額です。通常、損害保険では、全損の場合、事故発生時の目的の価額(保険価額)をこえては保険金を支払わないという共通の原則がありますが、人の生命を対象とする傷害保険では、保険の目的の価額は、契約の当時保険者と被保険者との間で協定済みのこととして、保険金額がそのまま支払われます。死亡本人の財産損がいくらになるかということは、対人賠償においては問題になるところですが、傷害保険では、幼児に対してでも、もし有効に一千万円の傷害保険契約が成立しておれば一千万円が支払われることになります。
 ただ、傷害保険では、保険会社の支払う金額は保険金額をもって限度とされているので、もし以前に医療保険金ないし後退障害保険金が支払われていれば、保険金額からこの既払分を控除した額が、死亡保険金として支払われます。
 死亡保険金は、被保険者が受取人を指定した場合には、その指定された受取人に、もし指定がされていない場合には、被保険者の相続人に支払われます。
 保険金受取人の指定は、通常、保険申込書の死亡保険金受取人欄に記入することによって行なわれます。この受取人は、被保険者の同意さえあれば、必ずしも被保険者の親族である必要はなく、友人や勤め先の会社であっても差し支えありません。
 相続人とは、被保険者死亡当時の法定相続人のことをいいます。夫の死亡により妻の婚姻関係が解消され、その後復氏したとしても、妻の相続人としての保険金受取人たる地位には影響ありません。
 被保険者が、遺言によって法定相続人以外に受遺者を定めた場合、この受遺者は保険金受取人になれるかという問題があります。これは、結局、死亡保険金請求権そのものが相続財産といえるのかどうかという問題に帰着しますが、もともと死亡保険金は、被保険者の死亡によって請求できるものですから、被保険者自身は、絶対にこの請求権を行使することはできません。したがって、死亡保険金請求権そのものは、被保険者に帰属するものではなく、指定された保険金受取人または法定相続人の固有の財産とみとめられ、相続財産には入らないと考えるのが妥当であると思います。
 この点については、生命保険に関して争われた同様の問題について、保険金請求権が相続人の固有財産であることを認めた判例があります。すなわち、被保険者の遺言による受遺者は、この保険でいう相続人には当たらないと考えるべきでしょう。同様に、死亡した被保険者に債務が多いため、相続人が相続の放棄をしたり、限定承認をした場合にも、死亡保険金は、これとかかわりなく請求して差し支えないと考えます。
 法定相続人が2名以上いる場合には、保険実務上は、各相続人から、印鑑証明とともに委任状ないし支払同意書を取り付けて、代表受領者を定め、その人に保険金を支払うことになっています。

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