交通事故を対象とする傷害保険の種類

傷害保険とは、被保険者(保険の対象となる者)いわば、被害者側に立つおそれのある人が、偶然の事故によって身体に傷害をこうむった場合に保険金を支払う保険です。
 損害保険協会で全国的に損害保険の市場調査をしたところ、80%をこえる世帯が万一の交通事故のことを考えていると答え、約10%の世帯は考えても仕方がないので考えないことにしていると答え、全く考えていないという世帯は、わずか7%という結果がでました。連日の新聞、テレビ等でも自動車事故の悲惨なニュースが伝えられていますが、このような交通戦争ともいえる時代を背景に、傷害保険への関心が年とともに高まり、ここ数年、傷害保険は対前年比の2倍程度の急速な拡大を続けてきております。
 現在発売されている傷害保険には、いろいろな種類があり、それがいろいろな形で自動車事故を対象にしていますが、まず最初に、傷害保険の種類から説明しましょう。

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傷害保険の種類については、いろいろな分類の仕方がありますが、対象とする危険と適用される保険約款を基準にすれば、つぎの6種類が考えられます。
 (1) 普通傷害保険
 日本国内で発生した「急激、偶然、外来の事故」がすべて対象になる保険です。自動車事故で負傷した場合はもちろん、航空機事故で死亡したり、野球で捻挫をしたり、あるいは料理で火傷を負ったりした場合にも保険金の支払われる、いわば万能型の保険です。
 (2) 交通事故傷害保険
 人の生命、身体を脅かす危険のうち、交通危険のみを対象とし、その代わり保険料を安くした保険です。自動車、原動機付自転車のみならず、汽車、電車、航空機、船舶などあらゆる交通乗用具に起因する交通危険を対象とするものです。
 (3) 国内旅行傷害保険
 国内旅行のため自宅を出発してから帰宅するまでの旅行危険を対象とする保険で、通常きわめて短期間のものです。旅行行程中でさえあれば、自動車事故を含む一切の事故が担保されます。
 (4) 国内航空傷害保険
 空港のカウンターでよく見かけると思いますが、本来、航空機に搭乗中の危険を担保する傷害保険ですが「航空券により搭乗を許される旅客送迎用自動車」に搭乗中こうむった傷害にも、保険金が支払われます。
 (5) 国外旅行傷害保険
 現在の傷害保険は、いずれも日本国内での事故を対象としているので、外国での事故に備えるためには、この「国外旅行傷害保険」を付けておかねばなりません。この保険を付けていれば、国外旅行行程中にこうむった傷害は、自動車事故、ホテルでの転倒事故など、事故の形態を問わず、すべての偶然な事故に対して保険金が支払われます。
 (6) 市民交通傷害保険
 この保険は市を保険契約者とし、保険申込みのあった市民を被保険者とする団体加入の保険です。この保険の特色は、(2)の「交通事故傷害保険」の担保範囲をさらに制限して、保険料の低減を図り、交通事故における差し迫った必要最小限度の救済を与えることにあるといえるでしょう。
 傷害保険にこのようにたくさんの種類があるのは、保険を付けようとする契約者の希望に応えるためです。できるだけ少ない保険料で、自分の曝されている危険に対して最大の効果のある保険を選ぶことが、合理的な保険の付け方といえましょう。
 このような観点からみれば、自動車事故の危険に対処するためには、何といっても(2)の「交通事故傷害保険」が最適といえます。この保険は、交通危険を専門的に対象とし、その他の危険を担保しない代わりに保険料を安くしたものですから、正に目的にぴったりの保険といえましょう。(6)の「市民交通傷害保険」も同じような目的で生まれたものですが、この保険は誰でも付けられるものではなく、市単位の保険なので、自分の住んでいる市がこの保険に加入していなければ、保険の申込みができないことになっています。交通事故だけでなく、日常生活において起こる他の危険、たとえばプロパンガスの爆発事故とか、スポーツ危険等をも、一つの保険で、合わせて対象とするものを選ぶとすれば、(1)の「普通傷害保険」を置いて他にはありません。
 (3)の「国内旅行傷害保険」や(4)の「国内航空傷害保険」も、自動車事故を一部分対象としますが、これらの保険は主として旅行危険、航空機搭乗危険を担保するものであり、副次的に、一定の条件下での自動車事故を対象とするものなので、自動車事故に備える傷害保険としては不十分です。
 外国へでかけるときには、どうしても(5)の「国外旅行傷害保険」を付けておくことが必要でしょう。この保険があれば、外国で自動車事故に遭い、高い治療養を支払わねばならなくなったとき、その治療実費が保険金で賄われ、手持ち外貨を節約することができます。
 以上の説明で「自動車事故」による傷害に備える保険としては「交通事故傷害保険」と「普通傷害保険」が中心的な存在であることがおわかりいただけたと思います。

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