生命保険と傷害保険

人の生命、身体を対象とする保険は、人保険とよばれ、傷害保険も生命保険も人保険の範躊に属しますが、傷害保険は損害保険会社によって引き受けられ、生命保険は生命保険会社によって営まれていることから、両者の間には内容的に相当な差があります。
 生命保険とは、人の生死を保険事故とする一切の保険をいいます。すなわち、被保険者の生存の場合の本人の経済的必要または死亡の場合の遺族の経済的必要を充足することを目的とする保険のことです。このことから生命保険の機能には、偶然的事故(死亡)による経済生活の一時的打撃、負担に対して保障する保険的機能と一定の事故(生存)を、ある限度において保障する貯蓄的ないし金融的機能があるといわれています。 傷害保険は保険期間内に発生する偶然な事故による傷害を対象とし、保険的機能のみを狙ったものですが、生命保険にはこのほかに貯蓄的要素があり満期まで生存すれば保険金を受領できる点に、生命保険が傷害保険と異なる大きな特色があるといえましょう。

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生命保険は最も基本的な分類によれば、つぎの3種類に大別されます。すなわち、死亡事故を担保する死亡保険、満期に生存する場合に給付を行なう生存保険、死亡の場合にも満期生存の場合にも給付をする混合保険の3種です。
 この他に年金保険(個人、団体)の部門もありますが、以上の中では養老保険と定期付養老保険で保有契約高の80%に達し、それに団体定期保険を加えれば、これら3種類で保有契約高の95%近くを占めることになります。
定期保険とは、被保険者があらかじめ定められた期間内に死亡したときに保険金が支払われ、期間満了時まで生存したときは何も支払われない保険です。したがって、貯蓄的要素のない死亡保険に属します。団体定期保険は、保険期間内に死亡した被保険者に所定の死亡保険金を支払う団体保険で、普通、1年定期団体保険の形が多いようです。災害保障特約をつければ不慮の事故による一定の傷害も担保されます。
 養老保険は、日本で最も普及している保険で、被保険者が保険期間中に死亡したとき、または満期まで生存したときに所定の保険金額を支払う保険です。いわば死亡保険と生存保険を組み合わせたものです。これに災害保障特約をつけけば、不慮の事故による傷害に対し傷害給付ないし入院給付金が支払われます。
 定期付養老保険は、最近、最も伸びている保険で、満期まで生存したときは満期保険金を途中で死亡したときには死亡保険金として満期保険金の2〜5倍の金額を支払うものです。
 生命保険に加入している者が自動車事故に遭った場合、保険金は、どの範囲まで受領できるかという問題ですが、まず自動車事故で死亡した場合には、どの種類の保険でも死亡保険金として保険金額の全額が支払われます。この点に関し若干支払金額の算出が独特なものは、生存保険に属する、こども保険です。
こども保険は、子供の学資、結婚資金等の準備のために、子供を被保険者とし、その扶養者を契約者として、子供が満期まで生存したときに保険金が支払われるものですが、満期前に子供が自動車事故で死亡した場合には、死亡給付金として、すでに払い込んだ保険料相当分が契約者に支払われます。また、保険料を払込中に、父の方が死亡または廃疾状態になったときは保険料の払込みが免除されますが、保険料免除開始後子供が死亡した場合には、死亡のときまで保険料は払い込まれたものとして死亡給付金が計算されます。
 つぎに、大部分の生命保険では、廃疾給付が行なわれます。これは、両手欠損、両足欠損、1手1足同時欠損、両眼失明、咀しゃく、言語の機能の完全喪失の五つの場合に、保険金額の全額が支払われるものです。
 自動車事故で後遺症を負った場合、廃疾給付にあたらなければ保険金は支払われませんが、前述の団体定期保険の災害保障特約または養老保険、定期付養老保険等の災害保障特約が付いていれば、一定の後遺症に対し保険金が支払われます。
 自動車事故で負傷した場合、一定期間以上入院すれば前記災害保障特約で入院給付金が支払われますが、短期間の入院とか通院のみの傷害には保険金は支払われません。
 傷害保険と生命保険は、各々たくさんの種類がありますが、ここでは、まず一般的に傷害保険と生命保険の違いとして指摘されているものに触れ、つぎに自動車事故との関連で最もなじみの深い交通事故傷害保険と定期付養老保険(災害保障特約付)の比較をしてみましょう。
 保険事故 傷害保険は、保険期間中に発生した偶然な事故による傷害を担保します。すなわち、保険金が支払われるかどうかは、偶然な事故が発生するかどうかにかかっています。一方、生命保険は、満期まで生存するか期間中に死亡するかによって保険金が支払われますが、結果からみればいずれかの事態は必ず発生します。定期保険のような例外を除けば、生命保険金は必ず支払われることになり、いわゆる掛け捨てがないという特色があります。生命保険では、死亡保険金よりも満期保険金を支払うケースの方がずっと多く、貯蓄的要素が濃いということがいえます。また、傷害保険が傷害、いわばケガを対象とし、疾病による死亡等を対象としないのに対し、生命保険は傷害、疾病の別を問わない点で、生命保険の方が範囲が広いといえます。
 保険料 掛け捨てにならないということは、感覚的には保険契約者に有利なように思われますが、実際上は必ずしも有利とはいえません。傷害保険の保険料は、保険期間中に傷害事故の発生する蓋然率のみを基準に算出されますが、生命保険の保険料は、この危険保険料部分のほかに貯蓄保険料部分が加味されており、後に具体的な例をあげるとおり、傷害保険料は、生命保険料よりはるかに安くなっているのです。
 保険金の種類 傷害保険には死亡、後遺障害、医療の各保険金があり、医療保険金のウエイトが極めて高いのですが、生命保険は主体が死亡と満期の保険金であり、傷害を負っただけの場合には、しかも自動車事故の場合この例が最も多いのですが、傷害保険の方が利用価値が大きいといえましょう。
 短期保険と長期保険 傷害保険は、1年ごとに更改される短期保険ですが、生命保険は、通常20年とか30年を保険期間とする長期保険です。このことからインフレの続く時代には生命保険は弱いという面をもっています。また、生命保険では解約すれば返戻金はかなり低くなります。

対物賠償保険金が支払われる事故/ 対人賠償保険金の支払われる事故/ 賠償保険の対象者/ どのような場合に賠償保険金を支払ってもらえないか/ 他人から預かっているものを破損した場合の賠償保険/ 記名被保険者に対する賠償保険/ 従業員の自動車事故による負傷に対する賠償責任/ 自動車事故によって同居親族に傷害を与えた場合/ 相手の車の格落ち損害も賠償保険の対象になるか/ 相手の車の休車損害や代替車費用も賠償保険の対象になるか/ 相手の車にも不注意のある場合の賠償金の支払/ 相手車との衝突で第三者の物件を損壊した場合の賠償責任/ 争訟費用も賠償保険の対象となるか/ 対人賠償保険で支払われる損害の範囲/ 好意同乗者に対する保険の適用と共同不法行為の決済方法/ 過失相殺される場合の自賠責保険と任意賠償保険との関係/ 搭乗者傷害保険金が支払われる事故/ 搭乗者傷害保険の保険金の算出方法/ 搭乗者傷害保険金の支払われない場合/ 搭乗者傷害保険を貰った時は賠償請求金額を減額されるか/ 事故が発生した場合の一般的義務/ 事故が発生した場合の各担保種目別の当面の処置/ 示談の前には保険会社の承認が必要/ 交通事故の示談書の内容/ 保険金の支払い請求権者/ 交通事故被害者が直接保険金を請求する場合/ 示談の前の保険金の支払/ 交通事故を対象とする傷害保険の種類/ 傷害保険でいう身体の傷害/ 交通事故傷害保険の対象となる事故/ 死亡保険金の支払われる場合/ 後遺障害保険金/ 医療保険金/ 傷害保険を申込むときの問題点/ 傷害保険が重複した場合の処理/ 傷害保険金が支払われない場合/ 第三者から賠償金を受領した場合の傷害保険金/ 傷害保険の請求手続き/ 生命保険と傷害保険/ 労災保険/ 通勤途中の電車での事故/ 出張の帰路の際に知人の車に便乗している間の事故/ 従業員の慰安旅行中の事故/ 労働者の重大な過失による災害も労災保険の対象となるか/ 第三者行為災害の意義/ 労働保険の給付と損害賠償や自賠責保険との関係/ 労災保険給付にあたっての加害者からの賠償の控除/ 求償や控除の範囲/ 同僚労働者の加害の場合に求償権を行使しない場合/ 示談と労災保険給付の関係/

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