搭乗者傷害保険金の支払われない場合
運転者・搭乗者傷害両特約ともに、運転者本人については、自動車保険普通保険約款と同じく、無免許または酒に酔って運転している間に生じた傷害については免責と
されています。
しかし、このような運転者といっしょに同乗中の搭乗者については、同条項の適用がなく、したがって、このかぎりでは、運転者本人が無免許・酒酔い運転中に搭乗者(同乗者)がこうむった傷害は担保されることになります。なお、無免許・酒酔い運転の解釈は、普通保険約款と同じです。
つぎに、運転者が無免許であったり、あるいは酒に酔って正常な運転ができないことを十分承知のうえで同乗したり、または運転者とともにスピード感やスリルを味わうため、運転者に無暴運転をけしかけた結果、事故を起こし、同乗者も傷害をこうむったような場合には、被保険者の故意または重大な過失として保険金は支払われません。
運転者本人についての運転中の重過失は免責から除外されていますが、故意は、とうぜん免責となります。
相続人やその他保険金を受け取るべき者の故意・重過失によって生じた傷害も、偶然性ならびに道徳的な危険を排除する意味から免責とされています。
傷害担保特約の負担する危険の範囲としては「正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中」という場所的制限を課し、かつ、身体にこうむった傷害を「急激かつ偶然な外来の事故」によるものと原因的・形態的に制限しています。
したがって、上記要件のいずれか、あるいは双方を欠いた場合は免責となります。
このうち搭乗中、急激、偶然などの意味は、すでに説明したとおりです。また、外来とは、傷害が身体内部に存し、その欠陥によって生じたものは除外するものであって、たとえば、他の自動車と衝突したためフロントガラスに被保険者が顔面を打ちつけるといった外来の事故に起因する傷害であることを要します。
したがって、いわゆる疾病や、妊娠、出産、流産、生理痛、強度の神経的機能障害による心神喪失、自動車に酔ったときなどに生じる、めまい、あるいは泥酔によって生じた傷害等は、免責とされます。ただし、被保険者に従来よりなんらかの疾病が潜在していて、そこに急激かつ偶然な外来の事故による傷害をこうむり、死亡、不具等に至った場合、あるいは傷害をこうむった後に、その原因となった事故と全く関係なしに生じた傷害もしくは疾病の影響によって傷害が重大となったときは、慎重に検討したうえ、それ以外の事由による損害に相当する金額が削減されます。
また、正当な理由なく被保険者が治療を怠り、または保険金を受け取るべき者が治療させなかったために傷害が重大となった場合も同様です。
傷害の解釈については、ごく常識的には、いわゆるケガと考えられ、また外部的にはたとえ異常はないとしても身体内部に急激かつ偶然な外来の事故に起因して異常をきたした場合も含まれます。
しかし、太陽の直射等によって発生する日射、照射に起因する障害、あるいは、いわゆる精神性ショック症状を指すものと考えられる強度の心理的ショックや興奮状態等の精神的衝動による障害は、身体の機能上異常をきたした状態というべきであり、いわゆる傷害ではありませんから免責とされます。
普通保険約款と共通の免責、(1)自動車が保険証券に記載された以外の車種または用途に変更されまたは使用されている間、(2)自動車が競争、練習または試験のために運転されている間、(3)自動車の使用について正当な権利を有する者の承諾をえない者によって、自動車が運転されている間に生じた傷害はすべて不担保とされます。
また、(4)戦争、変乱、暴動、政治的もしくは社会的騒じょう、またはこれらに類似の事変および労働争議、(5)地震、噴火、台風、洪水、高潮または津波、(6)核燃料物質または核燃料物質によって汚染された物の放射性、爆発性その他有害な特性の作用またはこれらの特性に起因する事故、(7)前記(4)(5)(6)に随伴して生じた事故またはこれらにともなう秩序の混乱にもとづいて生じた事故、(8)前記(6)に規定した以外の放射線照射または放射能汚染によって生じた傷害については免責とされます。
なお、これらの諸規定の解釈は、普通保険約款と同じです。
運転者限定特約が締結されている場合は、搭乗者傷害危険担保特約が契約されていても前者が優先適用され、保険証券記載の運転者以外の者が運転している間に生じた損害はすべて免責とされ、傷害保険金も支払われません。
対物賠償保険金が支払われる事故/ 対人賠償保険金の支払われる事故/ 賠償保険の対象者/ どのような場合に賠償保険金を支払ってもらえないか/ 他人から預かっているものを破損した場合の賠償保険/ 記名被保険者に対する賠償保険/ 従業員の自動車事故による負傷に対する賠償責任/ 自動車事故によって同居親族に傷害を与えた場合/ 相手の車の格落ち損害も賠償保険の対象になるか/ 相手の車の休車損害や代替車費用も賠償保険の対象になるか/ 相手の車にも不注意のある場合の賠償金の支払/ 相手車との衝突で第三者の物件を損壊した場合の賠償責任/ 争訟費用も賠償保険の対象となるか/ 対人賠償保険で支払われる損害の範囲/ 好意同乗者に対する保険の適用と共同不法行為の決済方法/ 過失相殺される場合の自賠責保険と任意賠償保険との関係/ 搭乗者傷害保険金が支払われる事故/ 搭乗者傷害保険の保険金の算出方法/ 搭乗者傷害保険金の支払われない場合/ 搭乗者傷害保険を貰った時は賠償請求金額を減額されるか/ 事故が発生した場合の一般的義務/ 事故が発生した場合の各担保種目別の当面の処置/ 示談の前には保険会社の承認が必要/ 交通事故の示談書の内容/ 保険金の支払い請求権者/ 交通事故被害者が直接保険金を請求する場合/ 示談の前の保険金の支払/ 交通事故を対象とする傷害保険の種類/ 傷害保険でいう身体の傷害/ 交通事故傷害保険の対象となる事故/ 死亡保険金の支払われる場合/ 後遺障害保険金/ 医療保険金/ 傷害保険を申込むときの問題点/ 傷害保険が重複した場合の処理/ 傷害保険金が支払われない場合/ 第三者から賠償金を受領した場合の傷害保険金/ 傷害保険の請求手続き/ 生命保険と傷害保険/ 労災保険/ 通勤途中の電車での事故/ 出張の帰路の際に知人の車に便乗している間の事故/ 従業員の慰安旅行中の事故/ 労働者の重大な過失による災害も労災保険の対象となるか/ 第三者行為災害の意義/ 労働保険の給付と損害賠償や自賠責保険との関係/ 労災保険給付にあたっての加害者からの賠償の控除/ 求償や控除の範囲/ 同僚労働者の加害の場合に求償権を行使しない場合/ 示談と労災保険給付の関係/
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